- 牛田 雅志
- ブレインリンク・コンサルティング株式会社
- 税理士
対象:会計・経理
世界中に喜びの種をまくために、「経営者の人格を高め、正しい経営を実践し、その事業を永続的に存続させる」品格経営と黒字経営を推進します。
品格経営のゴールは果てしなく遠いですが、「継続は力なり」を信じて、「ワンミリアクション」で歩みます。
”2秒の逡巡”
某月某日
近くのスーパーに車で妻と出かけました。
「夕食は何がいい?」と聞かれたので、「焼き魚」と返答したところ、妻は広告の品と書いてある一切れ98円のシャケを五切れ(五人家族です)ビニール袋に詰め込みました。私にはそのシャケ達がとても小さく見え、夕食にその一切れではとてもお腹一杯にならないと思い、「もう一切れ追加してくれ」とお願いしました。苦笑しながらも妻は六切れ目のシャケを袋に入れてくれました。
すべての買い物を終了し、あとはレジ精算のみです。妻は持ち帰り用のダンボールを探しにレジから離れていきました。
研修生の名札を付けた若いレジ係さんは、流れるようにバーコードを機械に読み込ませています。
次はシャケの番です。
バーコードがないので、研修生は声に出して商品名と個数を確認します。
「シャケが五切れ〜」ピーッ!
『ええっ!』
研修生にはビニール袋に入った六切れ目のシャケが他の五切れのシャケ達に隠れて見えないようです。
『う〜。どうしよう。このまま言わないでおこう。たかだか98円のシャケだしな。誰も見てないしわかりゃしない。きちんと在庫管理しているわけじゃなし、一切れくらい違っても研修生は怒られないはず。妻も儲けたと喜んでくれるはず・・・。う〜ん・・・しかし・・・』
「あの〜。シャケ五切れじゃなく六切れですよ。」
「えっ!すみません。訂正いたします。ご指摘ありがとうございます。」と研修生はレジを打ち直しました。
シャケ六切れと正直に告白するまで2秒かかりました。
なぜ直ぐさま
「違いますよ。六切れですよ。」
と言えなかったのか。自分の行動が情けなくて悲しくて。『人格を高めて・・・』と人には偉そうに言っているのに。
こんな自分の気持ちを隠すために、研修生の隣に立っていたもう一人のレジ係の方に、「実は僕が六切れ目を追加で入れたんですよ(だから分かったんです)」と、さも自慢げに告げると、満面の笑みで「ちゃんとご指摘いただいてありがとうございます!」と再び返されました。
恥の上塗りです。
「わざわざ正直さの押し売りをしなくても良いのに。『なにが僕が追加で入れた』だよ。すぐさま指摘しなかったくせに。」と言われている様な気がして、またまた落ち込みました。
”「正直さ」とはなにか”
「シャケ一切れにそんなにこだわって牛田さんはバカだねぇ」とあきれていらっしゃるかと思います。
シャケ一つにでさえ「本当のことがすぐに言えなかった」不正直さと、「私は良いことしたでしょう」と強引に相手から賞賛を欲した偽善さに、自分自身ショックを感じています。こういう性質は、自分には見えないところに染み出てくるものなので、余程しっかり意識していないと私は他人から愛想をつかされてしまうでしょう。
では、「正直」さというのはどういうことなのか?
小学生には「うそをつかないことです」と話します。
大人には「他人が見てなくても約束を守ることです」と話します。
経営者には「自分が口に出した言葉に責任をもつことです」と話します。
政治家には「得てはならないものを得ないようにすることです」と話します。
横断歩道を赤信号で渡らないこと。
余分にもらってしまった釣銭をそのままにしないこと。
出来もしないいい加減な予算を策定しないこと。
実力が伴わないのに大臣にならないこと。
「牛田さんの考えは少し固いねぇ。もっと柔軟に世の中を渡らないとバカを見るよ。」と諭してくださる方がいらっしゃるかもしれません。
「正直者は馬鹿を見る」という言葉は本当でしょうか。
私はそう思いません。
この言葉には次の言葉が続くと考えるからです。
「正直者は馬鹿を見る」と不正直者は言う。
正直であることは結果として、必ず信頼や幸福をもたらすと確信しています。
これからも、不正直者の発する言葉を真に受けず、「うそをつかない品格経営」を続けましょう。