- 牛田 雅志
- ブレインリンク・コンサルティング株式会社
- 税理士
対象:会計・経理
親子の会話
夜の九時、中学二年生の息子とテレビゲームに興じます。このゲームは
一人で遊ぶのではなく、二人で一緒に助け合いながら敵を倒すという「共同・協調」ゲームです。
「お父さん、あの敵やっつけて!」
「よし分かった!」
「ありがとう♡」
「お父さん、敵に攻撃されているから助けて!」
「よし分かった!」
「ありがとう♡」
「お父さん、早くこっちに来て!」
「ちょっと待って、すぐには行けないよ」
「もう、遅いなぁ」
「お父さん、すぐにその武器拾わないと!」
「そんなこと言っても、やり方がわからないよ!」
「どんくさいなぁ」
「お父さん、何やってるの、ダメだよ!」
「お前の言うとおりには・・・」
「お父さんのせいでまた負けたじゃない!」
「・・・・」
「お父さ・・・」
「も、もうやめじゃ!!!!」
とゲームの電源を切ってしまいました。
「お前とゲームをしていると楽しくないし、お前とは今後一緒にゲームしたくない」と
激しく文句を言うと「お父さん、下手過ぎ!」と切り返されてしまいました。
「私の下手さ加減を少しは考慮してくれたら良いのに!」と無性に
腹が立ちました。
他者の行動を評価する
でも、待てよ。
息子が私にしたことって、昔私がスタッフに対してやっていたことじゃないか?!
「経営者感覚をもっと持ってよ」
「緊張感全くないなぁ」
「言われる前にサッサと動いてよ」
私はいつもイライラして、自分の思惑通りに事が運ばないのをスタッフのせいにしていました。そして、あろうことか
「私の分身が何人もいればすべて上手くいくのになぁ〜」
とうそぶいていました。
でも、スタッフは経営者感覚と緊張感を持っていたし、私に言われるまでもなく、もっと早く先に動いてくれていたはずです。
今考えると自分がいかに傲慢で、スタッフに大変失礼な態度であったと反省しきりです。
自分の価値判断を押し付けていることに気付きませんでしたし、スタッフのやる気をそいでいたことも見えていませんでした。
優秀な営業マンであった経営者ほど、あるいは、大変な苦労をして今の地位を築き上げてきた経営者ほど、スタッフに対して、
「もっと頑張ればできるのに、なんでやらないのだろう」と不満顔です。
続いて、
「私は、君の何倍もの大きな壁に突き当たりながらも、なんとか苦労して今まで来たのだ。少々の困難に打ち勝たなくてどうする。乗り越えられない困難などないのだ!」と激を飛ばします。
ご自分が一生懸命に取り組んで成功してきたがきた故に、動かない(動けない)他人の行動を歯がゆく感じてしまうのです。
スタッフからすれば、
「私は、気力も十分あれば、努力もしているし、常に真面目に前向きに取り組んでいますよ。社長にはサボっているように見えるかもしれないけれど、私は相当困難で、行き詰っている状況なのです。社長と同じように出来ない人間がいることを理解してくださいよ」と思っています。
どうでしょう、分かってあげられるでしょうか。
人にはそれぞれ成長度合いがあり器量の大きさも違います。自分が正しいと思っている時には絶対に見えないのですが、人には独自のスピード感があり、そのスピードを「鋭い」とか「鈍い」とか他者が評価するものではないのです。その人の進む歩幅を理解すること、ゴールまで何時間かかるという速度の評価ではなくゴールするまで何時間でも見守るという行動が、相手を尊重し相手からも尊重されることにつながるのです。