民主党税制調査会(1・税制抜本改革の方向性) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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民主党税制調査会(1・税制抜本改革の方向性)

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税制改正 平成21年度税制改正
民主党税制調査会は24日、

民主党税制抜本改革アクションプログラム
ー納税者の立場で「公平・透明・納得」の改革プロセスを築くー

を公表した。

このアクションプログラムは、
先日公表された自民党平成21年度税制改正大綱に対応するもので、

その内容は次の5つから成り立つ。

1.民主党政権がめざす税制抜本改革のビジョン
2.税制改正プロセスの抜本改革
3.各税目における改革指針
4.執行体制の改革指針
5.平成21年度税制改正について

今日は、民主党の方針に関する1.2について紹介し、
具体的改正に関する3以降については、明日以降で紹介する。

まず、アクションプログラムには前文がついており、
この前文が、政府与党の経済財政運営に対する強烈な批判として
的を得た注目される特長にもなっている。



民主党は昨年の「民主党税制改革大綱(2007.12.26)」において、
納税者の立場に立って税制のあり方を根本的に変える税制抜本改革に
政権を担った暁には着手することを宣言した。
この税制抜本改革は単に税制の中身にとどまるものではなく、
税制を決めるプロセスにおいても実現されなければならない。

これまでの自民党政権下における税制改正は、税制に関する法的な
権限と責任を有するはずの総理大臣や財務大臣、総務大臣よりも
強大な権限を、なんら法的な責任を負わない与党税制調査会が持ち、
そこでの議論によって実質的な税制改正が決められてきた。
このような法的な責任を負わない機関が実質的な意思決定権
を有するという“権力の二重構造”は自民党政治の象徴であり、
民主党政権においてはこうした無責任・不透明な体制は
根絶しなければならない。
したがって、国民生活に直接影響する税制についても、誰が、
どのような内容の税制改正を、どのような手続きで決定するかという
税制改正プロセスは、納税者である国民の目から見て、
納得できるものにしなければならない。



自民党政権下において、政府税調、自民税調、経済財政諮問会議が
それぞれバラバラに議論され、一体どこに責任の所在があるのか、
分からないのが現状であり、民主党はそうならないように、
改正プロセスをオープンにして、納得してもらいますよ、と言うのである。

理想的な見解である。こういう大局を見据えた見解を示す
のであれば、余計に先日の強行採決が残念でならない。
強行採決こそ、議論に最終的にはフタをしてしまう行為だけに、
残念でならない。参院国対委員長はどう答えるのであろうか。

私の見解は兎も角、具体的にアクションプログラムを紹介しよう。



1.民主党政権がめざす税制抜本改革のビジョン

においては、3つの方針が掲げられている。

(1)納税者の立場に立つ では、

「代表なくして課税なし」の言葉に象徴されるように、
議会制度は税と共に発展してきたといっても過言ではない。
つまり議会制民主主義における税のあり方は、あくまでも
税を納める納税者の立場に立って決められるべきものである。

と、近代民主主義の萌芽期において、税が市民革命の基礎を
担う思想を作り上げてきた歴史を踏まえ、
為政者の立場ではなく、納税者の立場に立つことを明示する。

次に、(2)「公平・透明・納得」の三原則 では、

納税者の立場に立ってあるべき税制の姿を考えると、
それは公平で仕組みが透明で分かりやすく、
その仕組みに基づいて納税することについて、
誰もが納得できるものでなければならない。

という理念の下に、「公平」で「透明」性が高く、納税者が
「納得」できる税制の構築を標榜する。

(3)時代と社会の変化に適合する では、

世界はグローバリゼーションの進展により、これまで各国税制の
前提条件であった「国は納税者を囲い込むことができる」という
状況が根本的に変化し、納税者である人や企業は、担税力の高い
者ほど納税する場所さえ、自ら自由に決めることができるような
状況が生まれている。
また、税と社会保障の一体化やグリーン税制改革、国際連帯税など、
新しい税制改革の潮流も生まれている。
さらに、わが国は人口減少・超高齢社会というこれまで経験したこと
のない新しい社会へ突入している。税制抜本改革を行うに際しては、
こうした時代や社会の変化をしっかりと認識しなければならない。

という時代背景を示して、時代に即した税制を標榜する。

(3)に関しては、自民党と民主党の間に大きな差異はないが、
(1)、(2)を明確に打ち出したと言う点で、
民主党は、政権構想を示したとも言えるであろう。


2.税制改革プロセスの抜本改革 においては、

(1)これまでの政権における税制改正プロセスの問題点 として、

与党税制調査会、政府税制調査会、経済財政諮問会議が
バラバラの議論を行っており、責任の所在が曖昧である。

政府税制調査会は、内閣総理大臣の諮問に対し答申を出すことが
本来の仕事である。しかし、様々な有識者や業界団体の代表者等に
より構成されているため、答申は利害調整の結果の妥協の産物と
なりがちである。しかも、与党税制調査会を慮った答申が続いており、
本来の機能を果たしているとは言えない。

現下の厳しい財政状況の中で財政規律を堅持しつつ、メリハリの
効いた予算編成を行うためには、歳入をまず見極め、その上で
歳入に見合った歳出を決める「入るを量りて出ずるを制す」という
考え方に立って予算編成を行うことを基本とすべきである。
しかし、自民党政権はムダづかいや将来への負担先送りをするばかりで、
歳入歳出ともに制することも量ることもできず、迷走している。

と、従来の税制改正プロセスの不透明性を明確に批判し、
対案として、(2)、(3)を示している。つまり、

(2)民主党政権における税制改正プロセスの基本的考え方 では、

「公平・透明・納得」の三原則に基づき、責任の所在を明確化し、
政治主導の政策決定を行う。納税者の立場に立った税制議論を行い、
既得権益を打破し、公平で国民が信頼し納得する税制を築く。
まずは歳入予算を定め、それに対応した歳出予算を定めることを基本とする。

という理念を示し、(3)具体的な税制改革プロセス で、

与党内の税制調査会は廃止し、財務大臣の下に新たな政治家を
メンバーとする政府税制調査会を設置し、政治家が責任を持って
税制改正作業及び決定を行う。
地方税については、地方6団体、総務大臣、および、新たな
政府税制調査会が対等の立場で協議を行う。将来的には、
地方6団体を核とし、地方自治体の主体的判断に委ねる仕組みとする。
従来の政府税制調査会は廃止し、代わりに税制の専門家として
中長期的視点から税制のあり方に関して助言を行う専門家委員会を
新しい政府税制調査会の下に置く。
意見集約の過程は公開を原則とする。

と、税の専門家が、中長期的な視点からの税制のあり方を検討し、
具体的な税制改正は財務大臣を中心に政治主導で行うことを明確にした。

確かにこの方が責任の所在ははっきりするが、
問題は政治家が具体的な改正意見を集約しきれない場合には、
官僚主導になりかねない危険性を孕んでいるように思います。

その点が回避できれば面白い見解だと思いますが、皆さんはいかがですか?