少し前の話になりますが、旅行会社の社員が、遠足のバスの手配をし忘れていたというミスを隠すため、遠足を中止に追い込もうと考えて、生徒を装って自殺をほのめかすようなメールを送っていたという出来事がありました。
このような現場のミスを隠そうとすることが、最近よく目につくように感じます。
警察官が事件の証拠品を紛失してしまい、別の物品に差し替えてごまかそうとしたり、郵便配達員が、時間内に配達が終わらなかったからといって、郵便物を届けずに捨てたり、建築物の強度偽装や食品の賞味期限偽装などということもありました。
遠足バスの件でいえば、手配ミスが発覚した時に、何とか緊急に手配して間に合わせることができればそれが一番良いはずですが、なぜ「遠足を中止にさせよう」という発想になったのかが良く理解できません。
この手の話題を見ていていつも思うのは、「想像力の欠如」ということです。
多くの例に共通するのは、「その場しのぎでとりあえず隠してごまかす」ということで、その嘘やごまかしが、バレて発覚したときのことには、まったく想像が及んでいません。
こういう対応は、小さい子供がよくすることです。「注意されても聞こえないふりをする」「隠してごまかそうとする」「他の子のせいにする」など、とりあえず自分が怒られないように、その場を何とかやり過ごそうとします。その行動の結果にどんな影響があるかまでには考えが及びません。相手が子供の場合では、仕方がない面があるでしょう。
隠し事をする理由として、「周りに言いにくい」ということがあると思います。これは最近の若者を指してよく言われる、「嫌なことは避ける」という傾向に通じるものがあります。
同じく言われる「失敗を極度に恐れる」という傾向も、「誰にも失敗を悟られたくないから、他人には一切言わずに自分だけで解決しようとする」というところにつながります。
さらに「自己中心的」ということでは、自分の都合だけを考えているので、物事の優先順位がいびつに捉えられているということがあります。
「想像力の欠如」は、経験が少ないために先のことが想像できないということで、全体最適を考えられないということです。一言で言えば「子供っぽい」ということになってしまいますが、企業で働く人材として、これは致命的欠陥です。また、この問題は、年齢を重ねるほど大きくなっていきます。
こうならないためには、できるだけ若いうちから「最悪の想定と、その中で最善の解決策を考える」という全体最適の視点を身につけさせることが必要になってきます。このことで相手の様子を見極めずに大人扱いをして、ただ「常識で考えればわかる」などと言って放置していると、いつか大変なしっぺ返しを食らうことになりかねません。
「常識で考えればわかること」も、教えなければいけない時代になって来たのだと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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