社員がいる限り、退職者が永遠にいない会社はありません。何らかの理由での別れはあるものですが、最近は一度退職してしまった人も、あらためて会社に呼び寄せたり、本人が復帰を希望すれば優先して受け入れをする「出戻り歓迎の会社」が増えています。
その人の働きぶりや人となりを知っていること、外の空気を吸った上であらためて自社を良いと思ってくれたことなど、出戻りを“より望ましいこと”ととらえる経営者もいらっしゃいます。ここまでではなくても、会社を辞めて独立した人やその転職先の会社と、仕事上の関係を持ったり取引をしたりするようなことは、それほど珍しくはないと思います。
こんな話の一方、あるところで「退職者の送別会は禁止」という会社に出会ったことがあります。実際には内輪でこっそりやっていることもあるようですが、オフィシャルには定年まで勤め上げた人以外、送別会をやってはダメなのだそうです。
この社長さんいわく、「目をかけて、一生懸命仕事を教えて、家族と同じと思って接してきた人間がドライに辞めていってしまうことを、本心ではどうしても許せず素直に送り出す気持ちになれないから」とおっしゃっていました。
多くの方は、この「送別会禁止」の社長さんにはあまり共感できないかもしれませんが、一方では「それほど社員に真剣に向き合った証拠で、だから失望も桁違いに大きい」とも言えるので、一概に非難ばかりもできないように思います。
このあたりはもう根本的な人間観の違いであり、辞めた人をそのまま仲間と思い続けるか、裏切り者と思うかの違いです。
ただ、ここでうあらためて言うほどのことでもありませんが、裏切り者とは二度と付き合えない訳で、二度と付き合えないような人は少ない方が、ビジネス的には良いに決まっています。ビジネス的な環境が厳しい昨今だからこそ、今までは眼中になかった退職者とも縁をつないだ方が得策だと考えるようになり、それが「出戻り歓迎」にもつながっていると思います。
特に、私たちのような小規模事業者がお仕事の依頼をいただくのは、本当にご縁しかありません。前述の「送別会禁止」の社長さんも、もう一歩進んで開き直る事ができれば、もっと新しい世界が開けて来るように思うのです。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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