【新しくなった国土強靭化法】
只今、臨時国会で国土強靭化法案の審議をしています。東日本大震災から2年半以上経過しようやくここまでたどり着きました。その間には紆余曲折があり、当初自民党が選挙用に打ち出した天文学的規模の財政出動をする様な、バラマキ行政から大きく方向転換しているようです。
国土強靭化と云う日本語をナショナル レジリエンスと云う英語に置き換えただけで、考え方が大きく変化しています。
【レジリエンスと云う発想】
レジリエンスとは心理学用語で回復力や復元力を指します。欧米ではこのレジリエンスと云う発想を9、11テロ以降使い始め、現在では国家防衛戦略の根幹をなす発想として使われています。
国土強靭化と云えば、コンクリートで今までの何倍もの高さの防潮堤を造る様な事をイメージしますが、これは万里の長城にも匹敵する、労多くして効少ない努力です。そもそも、100年に一度の災害に対してこれだけ大金を投入して、景観を損ね、不便に耐える事が強靭化でしょうか。
レジリエンスと云う言葉には、平常時には抵抗力を高め、非常時には回復力を高めると云う意味合いを含みます。つまり国家戦略に置き換えると、平常時にはその強靭化対策が、その地域社会に貢献し、非常時になれば、本来の強靭化の役目を果たすと云う考えになります。つまり平常時でも何等かの社会貢献する様な対策をしていこうとする発想です。
【具体的には】
例えに防潮堤の話しをしましたが、防潮堤は非常時の為の施設です。非常時以外は邪魔なだけの施設ですので、これはレジリエンスに反します。津波タワーも同様です。
仮に海岸沿いにある公民館を船の様な構造にすればどうでしょう。平常時は公民館としてその地域に利用されます。津波が来ればノアの方舟となり、高台まで走って行けない子供やお年寄りの命を守ります。
この様な抵抗力もあり回復力もある発想で、日本の国土を見直そうとする発想がレジリエンスです。
【住宅政策に振り返れば】
木造住宅は他の構造の建物に比べ脆弱と思われがちです。しかしどの構造も建築基準法と云う法律で強度が定められた構造ですので、基本的に強度の違いはありません。では何故木造が脆弱なのかと云いますと適切なメンテナンスがなされていない為です。マンションやビルには建築基準法で定期検査が定められています。しかし、木造住宅の様な小規模な建物では定期検査の義務がありません。
その為、「義務が無い=メンテナンスしなくてよい」と勘違いされ、災害時に大きな被害となって現れるのです。今回の強靭化法案では住宅の車検制度とも云われる、家検制度の導入も検討されています。
これも抵抗力を高め回復力を高めるレジリエンスの発想の線上にあります。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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経済的な熱損失計算(性能基準)で、次世代省エネ基準を取得できる提案をします。
構造等級3を基本にご相談いたします。木造三階建て等で行う応力度計算も自社で行いますので、意匠と構造の齟齬がありません。
また、IAU型免震住宅設計資格取得者として、免震住宅等の相談も行っています。
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