(続き)・・24日の朝刊に「株急落・・1143円安」という見出しのニュースがデカデカと載っていました。23日の東京株式市場で、1143円安という大幅な株価の急落となったのです。98%もの銘柄が下落するという全面安の展開でした。
私は株式投資をやっていないので他人事のようにこのニュースを見ていましたが、株に多額の資金を振り向けている人や組織は、恐らく気が気ではないのではないかと思います。人によっては大きな損失を出したかも知れません。
昨年秋の安倍首相の再登場から一本調子で上がっていた株価は、ここにきて一気に調整局面に入ったようにも見えますが、新聞の論調などを見る限り、それほど悲観的な見方は拡がっていないようです。すなわち日本経済の回復基調はたいへん底堅く、企業業績も総じて改善に向かっていると考えられるからです。
同じ日の日経新聞朝刊には、室町時代の僧侶「一休さん」の逸話が掲載されていました。一休さんといえば、漫画やテレビアニメなどで有名となり、海外でも人気を博していますが、口癖の一つが「一休み、一休み」です。
根を詰めて頑張るのも良いけれど、一休みしながらのんびりやるのも一つの生き方です。仕事に習い事にスポーツにと、追い立てられるように生活している現代の子供や若者に一休さんが受けているのは、一つにはあくせくしない、肩の力を抜いたような生き方への憧れというものが感じられるからでしょう。
20年にも及ぶ経済の低迷を挽回しようとばかりに急上昇を続けていた株価も、ここにきて一息ついた感じですが、一休さんに言わせれば「株も、休み休みが良いのですよ」と諭されているような気がします。株が上がるのは結構なことですが、一気に上がるよりは休み休み上がる方が、長期的な観点からは良いのかも知れませんね。
さて前回のコラムで、高濃度のビタミンC点滴がガンに対して有効に働き、しかも生活の質(QOL)を劇的に向上させる、というお話をしました。一時期は不遇をかこったビタミンC点滴の研究および臨床ですが、米国立ガン研究所など多くの施設の応援も得て、今や確固たる市民権を得るに至りました。
但し栄養素であるビタミンCの点滴は、例えば抗がん剤などに比べれば遥かに安全で副作用も少ないのは確かですが、正しくない方法で点滴をした場合には、それなりの危険性があります。また少しでもガンなどに対する有効性を向上させるために、いくつかの注意点と工夫が存在します。
第一に注意しなければならないのが、ビタミンC点滴の「禁忌」です。ガン患者も含めビタミンC点滴は誰でも受けることができる汎用性の広い治療法ですが、ごく稀に受けることが出来ない場合があります。それは「G6PD欠損症」の方です。
これは赤血球膜の構造を維持する酵素であるG6PD(グルコース-6-リン酸脱水素酵素)が遺伝的に欠損している酵素異常症で、東南アジアや黒人には多いものの、日本人には比較的まれであり、数百人に一人程度の頻度です。
しかしこのG6PD欠損症の方に高濃度ビタミンC点滴を施行した場合、赤血球が破壊される「溶血」現象が起こり、最悪の場合は重症の貧血から腎不全に至る危険性があるため、禁忌とされています。この酵素異常の有無は保険外となりますが、血液検査で簡単に調べることができます。
高濃度ビタミンC点滴に重大な副作用は報告されていませんが、心機能や腎機能が低下した方に点滴をする場合、体液の貯留に基づく血圧上昇や浮腫などに注意が必要です。ビタミンC製剤にはpH調整のために水酸化ナトリウムが添加されており、このナトリウムが水分を体内に貯め込む方向に働くからです。
心、腎機能の正常な一般の方の場合、利尿作用が働いて余分なナトリウムや水分は速やかに尿として排出されるため、健康上の弊害が生じる心配はありません。但しそのために点滴中や点滴後に尿量が増加し、また喉の渇きを覚える方が多数です。従って点滴中にはたくさんの水を飲む必要があります。
副作用とはいえませんが、点滴中に血管痛が生じることがあります。上記のナトリウム等が血管に対して刺激となるためです。但しこの血管痛は、点滴溶液にマグネシウムを混注することでほぼ防げます。実際に米国や日本などの公式プロトコールでは、ビタミンC点滴溶液にマグネシウムを予め混注することが推奨されています。
高濃度ビタミンC点滴の効果を充分に発揮するために必要な工夫の一つとして、ビタミンCの「血中濃度」を測定することが挙げられます。維持量としてのビタミンCの投与量は50g、75g、100gと幅がありますが、点滴直後のビタミンC血中濃度を測定することにより、その投与量を決定するのです。
ビタミンCは「抗酸化」作用を発揮し体の組織や細胞を酸化から守っていますが、高濃度になると一転して細胞を「酸化」させる力を発揮します。ビタミンCが過酸化水素を産生し、ガン細胞などを殺傷するのです。
但し正常細胞はカタラーゼなどの酵素で過酸化水素を無毒化するため生き残りますが、ガン細胞はカタラーゼを持っていないため過酸化水素の攻撃をまともに受け、死滅してしまうのです。そのため正常細胞には何の害も及ぼさず、ガン細胞だけを殺傷することが可能となります。ビタミンCが「天然の抗がん剤」と呼ばれるゆえんです。
ビタミンCは濃度依存性にガン細胞を殺傷しますが、その血中濃度が350mg/dl以上になると急速にガン細胞の殺傷力が向上するとされます。従って点滴直後のビタミンC血中濃度が350mg/dl以上となるようにビタミンCの投与量を決定します。通常は50gから75gの投与量でこの血中濃度が達成されますが、一部の方では100gの投与量が必要となります。
点滴の治療スケジュールとしては、病気の進行度や体力、治療効果などに左右されますが、最初の半年間は週2回、次の半年間は週1回、2年目は2週に1回、3年目は1ヶ月に1回のペースで行なうことが推奨されています。
ところで高濃度ビタミンC点滴の効果を飛躍的に向上させる方法にはいくつかありますが、その一つに「体温管理」があります・・(続く)
蒲田よしのクリニック(内科)
吉野 真人
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このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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