小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ私が見た「厳しい就活」の「素晴らしい結果」
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お世話になっている会社の、新入社員さんのお話です。
この会社では昨年12月に、新卒採用の事務職を1名だけ追加募集することになりました。そこに応募してきたのがAさんでした。
Aさんは、これまでに応募したのはすでに100社以上でしたが、なかなか良い結果が得られていないとのこと。それでもあきらめずに活動を続けていました。事務系の仕事が自分に合っていると思い、ずっとそういう観点で活動してきたそうです。
初めてお会いしたところ、まずは真面目でおとなしく、とにかく緊張しやすい人でした。それは面接中に緊張のあまり涙ぐんでしまうほどです。たぶん面接では、なかなか評価されづらいタイプでしょう。
面接の段階では、正直「難しいかなぁ」というのが本音でした。
その後この会社では、普通はあまりやらない実技試験をやります。事務職では難しい漢字や読みづらい漢字の入った文章を入力してもらい、その手際や確認の仕方、間違いの有無などを評価するのですが、Aさんはここで力を発揮します。入力も早く、難しい字も読め、確認作業もとても緻密です。面接では見えなかったところが、高く評価されました。
最終面接でもやっぱり高い緊張度でしたが、初対面の人と話すという、本人が最も苦手とする事に一生懸命取り組む姿が今度は逆に好感を生み、縁あって採用、入社ということになりました。
入社後の今でも、緊張しやすいのは相変わらずですが、自分なりに着実に仕事を身につけ、すでに会社では欠かせない人材になっています。本人にとっては厳しい就活だったでしょうが、結果は素晴らしいものになったのではないかと思います。
私はAさんの例を持ち出して、楽観論を語るつもりはありません。昨今の就活、やっぱり厳しいものは厳しいです。
ただ私が気になるのは、最近、就活テクニックのようなことばかりクローズアップされがちであることです。面接テクニック、自己アピールの方法、書類の書き方、さらには服装から履歴書の写真うつりまで。
これには採用する企業側にも問題があるでしょう。やっぱりきれいに整った応募書類、ソツがない面接での受け答えは、確かに良い印象で捉えます。限られた時間の中では、なかなか内面まで見極められませんから、どうしても表面的な事に左右されてしまいます。ですから、これに一生懸命取り組むことも、悪いことではありません。
ただ、それが本当に自分の姿を表現しているのだろうかということです。苦手なことを克服する努力も、知らないことを知る努力も、できないことをできるようにする努力も、それぞれ必要なことですが、それは時間がかかることです。小手先で取り繕うことには、やっぱり限度があります。
今の自分で何が評価してもらえるのか、それをどうやって相手に分かってもらうかを考える方が、大事なことのように思います。
Aさんのやったことは、自分の性格に合っていると思う仕事を、あきらめずに探し続けたということにつきます。1年以上の期間、100社以上にわたって続けた就職活動自体が、地道で継続的な取り組みができること、あきらめない性格、その職種にたずさわりたいという熱意を表しています。そこに偶然ではあっても、自分の得意な実務能力を表現する場があったということです。
一番の教訓は、「あきらめれば可能性はゼロだけど、あきらめなければ可能性はある」ということなのかもしれません。「続けていれば必ずチャンスはある」「続けていれば見てくれる人は必ずいる」と私は思います。
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