小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ問題は「閉鎖的な組織環境」でエスカレートする
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以前、ある保育園で女性保育士数名が園児に暴言などを繰り返し、市から行政指導を受けていたというニュースがありました。保護者からの苦情で園長らは保育士の不適切な言動を把握し、口頭で指導をしていたそうですが、その後に録音された音声データでも改善されていませんでした。暴言を繰り返した保育士たちは、退職したそうです。
また、県立の高校で、特定の生徒が担任の男性教諭から暴言を繰り返し受け、頭を丸刈りにされたとして、同じクラスの生徒全員と保護者が、謝罪と教諭の懲戒免職を求める嘆願書を教育委員会に提出したというニュースがありました。処分の検討と合わせて、この教諭は別の高校へ異動したそうです。
保育園のケースでは、注意されているにもかかわらず改められなかったということで、直接見られなければ大丈夫などと、たかをくくっていたところがあったように思われます。
学校では、生徒より教師の方が明らかに強い立場であり、さらに教師が唯一の大人という場面も多いため、他の大人の目が届きにくい閉鎖的な環境であることが、こういう問題を引き起こす一因になっていると考えられます。
いずれも、当事者以外の第三者の目が届きにくかったことは間違いありません。
企業でのパワハラ問題も、基本的な様子は似ています。上司が強者として傍若無人な振る舞いをし、周りの人はそれを知らない、止められない、見て見ぬふりのいずれかです。閉じた環境下で周辺の人の立場が相対的に弱く、注意できる第三者がいません。
また、隠蔽や不祥事は、部外者である第三者にバレなければいいという発想が多いので、やはり同じように閉鎖的な環境ありきの話です。
このように、他人の目が届かない環境下では、問題が非常に大きくなってしまうことがわかります。真面目で善良な人でも、置かれた環境によって行動が変わってしまいます。
思い出すのが、倫理的に大きな問題があった心理学実験として有名な、「スタンフォード監獄実験」の話です。
監獄を模した施設で被験者を囚人役と看守役に分け、その行動を観察するというもので、「人間の行動は、その人の気質や性格で決まるのではなく、置かれた状況によって決まる」ということを証明しようとした実験でした。
しかし、看守役の非人道的な行動はどんどんエスカレートし、それに対して囚人役は無抵抗となり、ストレス障害を発症する者も出たことから、当初の予定を大幅に短縮して打ち切られました。まさに環境が人間の行動を大きく変えたわけです。
また、この実験をおこなった心理学者は、障害を発症する被験者が出ても、実験をやめようとしないほどのめり込み、同じ心理学者である恋人から強く非難されたことで、我に返って実験の中止を決断したそうです。
それほど周囲からの働きかけは重要で、さらに閉鎖性が強い環境であるほど、その働きかけが強くなければ気持ちが変わらないということです。
パワハラやセクハラ、隠蔽、改ざん、その他企業で起こっている不祥事は、どれも「閉鎖的な組織環境」という共通点があります。
これらの問題の多くは、社員同士や取引先、その他組織外部の人など、開かれた関係での交流を活発にすることで、ずいぶん防ぐことができると思います。
「閉鎖的な組織環境」にならないように、第三者の客観的な目を取り込むことは、問題発見と解決、予防のためにはとても重要です。
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