小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「気が進まない仕事」でそう感じる理由を考える
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私も組織から独立して仕事をしている一人ですが、そんな経営者や独立事業者が集まると、そこでは「気が進まない仕事はやらない」という人が圧倒的多数になります。
その人たちにとって、「気が進まない仕事」のほとんどは「相手とWin-Winの関係にならない仕事」で、自分にとって一方的なマイナスが懸念される仕事です。そんな状況を敏感に感じとって判断しています。
しかし、経営者や独立事業者であっても、「気が進まない仕事」をやらざるを得ないことはあります。強固な下請け関係の環境で、断ったら次はない、大口顧客の他に選択肢がないなどとなれば、どんな悪条件で「気が進まない仕事」であってもやるしかありません。
しかし、やはりそれは自社の仕事の選択肢をさらに減らし、会社の業績は決して良くならないという悪循環に陥っていることが多く、長い目で見ると、顧客と自社がWin-Winになっているとは言えません。
また、企業の中で仕事をしていると、ただ自分の考えだけで、「気が進まない仕事」を「やらない」と判断をするのは難しいことです。自分の行動が他の人に迷惑をかけることもありますし、組織の中で良い立場を得るため、良い人間関係を維持するためには、気が進まなくてもやらなければならないことがあります。
ただ、最近の傾向で言えば、すでに終身雇用は崩れていて、組織の意向に一生懸命従っていても、将来が保証されている訳ではありません。気が進まないことをやり続けた結果が、リストラや左遷、倒産ということもあります。長期に渡る貸し借りが成り立たなくなっていますから、直近のメリットが思いつかないような「気が進まない仕事」は、極力やるべきでない時代だといえるでしょう。
そんな「気が進まない仕事」でも、唯一考えなければならないことがあります。気が進まない理由の中に、「知らない」「経験がない」「やったことがない」というものがあることです。新しいことに対する面倒さ、未知のものに対する不安や怖さ、好奇心のなさといったものが本音ですが、こういう中には自分の経験やレベルアップのために、やった方が良いものが含まれていることがあります。
経験がないという理由で「気が進まない」と感じるのは、現状がうまくいっている人、ある分野で専門性が高い人、自分に自信がある人、経験豊富なシニアの人などに多いようです。性格や年齢の問題はありますが、いずれにしても新しいことや知らないこと、変化することを、無意識のうちに避けようとしています。
イヤイヤやった仕事が天職になることは確かにありますが、「気が進まない仕事」を、ただ将来のためだといってやり続けるのは、私は無意味だと思います。単なる雑務や他にやる人がいない仕事に、その人を縛りつける方便にされていることがあるからです。役に立たない下積みともいえます。
ただ、「気が進まない仕事」を感覚だけで判断していると、自分のために経験しておいた方が良いことまで排除している可能性があります。
「気が進まない仕事」に出会ったとき、なぜ気が進まないのかという理由をしっかり意識しておくと、こういったことが防げます。それが新しいことへの後ろ向きな気持ちだったときは、あえて取り組むべきことかもしれません。
これは経営者、独立事業者、企業勤務を問わずに共通していることだと思います。
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