小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「自力でできること」と「どうしようもないこと」の区別
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ある会社のメンバー数人が、自分たちのチームリーダーに対して、「話を聞いてくれない」「指示が不明確」などと言い、「リーダーの仕事をしていない」などと不満を話しています。
その矛先のチームリーダーに話を聞くと、こちらはちょっと悩んだ表情をしながら、「メンバーたちに自分の思いが伝わらない」といいます。
リーダーが言うには、チーム内で日常業務として当然やるべきことが放置されていたり、指示したことが徹底せずにルーズに扱われていたりすることがあるそうです。メンバーを気づかっているつもりの発言や行動が、かえって裏目に出て反発を浴びたりすることもあるといいます。
チーム内のコミュニケーションに問題があるのは間違いありませんが、それぞれの立場で言っていることには、共通点があります。それは「相手が自分の意図する行動をしてくれない」と不安を言ったり批判したりしていることです。
ここで考えなければならないのは、「他人が自分の思い通りにならないのは当たり前」ということです。相手に自分の意志を伝えて働きかけることは「自力でできること」ですが、その結果がどうなるかはあくまで相手次第で、自分がコントロールすることはできません。相手が最終的にどう行動するかは、自分では「どうしようもないこと」です。
いろいろな人に話を聞いていると、この自分では「どうしようもないこと」に対して、いら立ったり腹を立てたり、不満を言ったり批判をしたりというが、思いのほか多いです。自分では「どうしようもないこと」によって、よけいなストレスをためています。
ここでお勧めしたいのは、「自力でできること」と「どうしようもないこと」を、しっかり区別する習慣です。このことを意識していると、特に人間関係上の他人に対する不満は、ずいぶんと軽減されます。
前述の話であれば、例えばリーダーが「話を聞いてくれないこと」は、話を聞かない相手の行動は変えられませんが、聞いてもらえるまでこちらから話し続けることはできます。
リーダーの「指示が不明確なこと」は、相手の指示のしかたは変えられませんが、自分から指示を確認して明確にすることはできます。
「指示が徹底せずにルーズになる」というのも、自分でできるのは、指示が徹底するように伝え続け、確認し続けることまでです。
人間には、自分の努力では思い通りにならないことがたくさんあり、それは他人の気持ちであったり組織上の制約であったり、その他いろいろです。それはどこかで改善される可能性はあるとしても、自力でできない限りはいくら考えても仕方ないことで、そういうことは当面放っておくしかありません。
相手の気持ちや行動を変えようとしても、相手にその気がなければどうにもなりませんが、自分の行動は自分で変えることができます。
自分では「どうしようもないこと」をしっかり区別していると、逆に「自力でできること」が見えやすくなります。
自分では「どうしようもないこと」に関する悩みが、意外に多い感じがします。
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