小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「昇進しやすい人」がリーダー向きとは限らない
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どんなタイプの人がリーダーに向いているのかを示した「リーダーに向いている人の特徴」では、とても多くの要件が挙げられます。
例えば、「仕事ができる」「信頼される」「責任感が強い」「行動力がある」「逆境に強い」「メンタルが強い」「判断、決断に優れている」「努力をいとわない」「話をよく聞く」といったものが目につき、これらを見る限りは、リーダーが「人格者」であることを求めています。
組織の中に「リーダーに向いている人格者」がいれば、組織を良い方向に向けることができるので、その素養を少しでも持った人を見つけ出し、育成して登用することが重要になります。
しかし、ここに挙げられた項目がリーダーの要件となると、そもそもハードルが高いので、すべてを兼ね備えた人は、ほぼ存在しないと思われますし、人格的な要素が多いため、教えることや育てることにも難しさが伴うでしょう。
多くの企業でリーダー育成が課題に挙げられますが、「理想のリーダー」はそう簡単にあらわれるものではありません。
そんな中、目に留まったある記事に、「共感力の低い人ほどリーダーになりやすい」というものがありました。
心理学では「暗黒の3要素」と呼ばれる人格特性があり、それは「自分の野望や利益に固執し、そのために他人に影響を及ぼして踏み台にするマキャベリアン」「ひどい自己本位の傾向であるナルシズム」「他者への共感や気配りが欠如した反社会的人格であるサイコパス」の三つだそうです。
自分ファーストの「イヤな奴」という感じですが、組織の長となる人には、この「暗黒の3要素」の特質を持った人が相対的に多いといわれているそうで、組織の中で「昇進しやすい人」となるそうです。
また、長く権力に居座ると共感力がさらに低下することや、裕福な人ほど共感力が下がって、賄賂や脱税などの非倫理的な行為が許されると考える確率が高いなど、権力は共感を促進する脳のプロセスを阻害することがわかってきているといいます。
このように、組織の中でリーダーになるのは「昇進しやすい人」であり、必ずしも「リーダーに向いている人」ではありません。
「昇進しやすい人」は、「暗黒の3要素」の傾向が強い自分本位な人であり、競争原理ばかりでリーダーを選んでいると、必ずしもリーダー向きではない、自分本位のリーダーばかりが生まれてしまいます。それは組織にとって困ることです。
これを防ぐには、「リーダーに向いている人」が登用される仕組みを作ることと、リーダー向きの人材を数多く育てることしかありません。
組織を牛耳って私腹を肥やすというような不祥事は、相互監視が行き届いているはずの大企業でも起こっており、多くはそこに「暗黒の3要素」を持ったリーダーが存在しています。自分本位で共感力が低い人に、性善説をもとにした節度を求めても、本人に都合よく利用されるだけで絶対うまくいきません。
リーダー向きか、そうでないかの境目は、よく観察していてもわかりにくいですし、出世欲や権威欲の強い人は、手段を選ばずそれを得ようとするので、すべてルールで縛ることも難しいでしょう。
やはりリーダー向きの人材をリーダーに登用することが重要であり、そのためのリーダー育成は続けていかなければなりません。
「昇進しやすい人」がリーダー向きとは限りません。リーダーの選び方、任命のしかたには、十分に注意しなければなりません。
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