小笠原 隆夫(経営コンサルタント)- コラム「「休む“権利”と“不便さ”は表裏一体」という話を聞いて」 - 専門家プロファイル

小笠原 隆夫
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小笠原 隆夫

オガサワラ タカオ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
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「休む“権利”と“不便さ”は表裏一体」という話を聞いて

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 目に留まった事 2023-03-15 22:48

 「ドイツ人は残業しない」というのは大いなる誤解だという記事を読みました。

 著者によれば、日本で働き方改革のような話になると、「欧州ではこれだけ休む」「誰も残業しない」などと言われますが、決してそんなことはなく、労働時間の短さを引き合いに出されるドイツでも、残業しないなどということはまったくないそうです。

 

 仕事が終わらなくても「帰ります」と言う人は、確かに日本よりもいますが、そういう人を積極的に評価しない、大事な仕事は任せたくない、というのは日本と同じで、「上司に認められたい」「出世したい」という人は、結果を残すために積極的に残業するそうです。

 ただし、「労働時間貯蓄制度」といって、「今日2時間残業したので明日は2時間早く帰る」という調整をすることが根付いているので、その点は少し違うとのことでした。

 

 これとは別に私がとても気になったのは、毎年1ヶ月にわたるバカンスの実態に関する話でした。

 「休暇を取っても仕事が回る」ということは決してなく、誰かが休めば当然仕事は滞るそうです。

 特に夏のバカンス時期は、みんなが休みなので、役所へ行っても担当者が休みで手続きができない、病院の医者が休みで処方箋がもらえない、なじみのカフェやレストランもみんな休みだったりするといいます。

 休暇を取る側は休めるのでよいですが、仕事の発注側やユーザー側に立つと、バカンスのせいで仕事は全然回っておらず、手続きも買い物も食事もできなくなりますが、それをお互い様と割り切ってあきらめているだけだと言っていました。ドイツは労働者が休みやすいけれど不便なことがたくさんあり、日本は労働者が休みづらいかわりにいつでも便利だということでした。

 

 この話は、私にとっては腑に落ちるところが多いものでした。「日本人は生産性が低い」などと言われ、ドイツの効率的な働き方を見習えという話がありますが、その指摘が必ずしも正しくないことがわかるからです。

 日本の場合は、店の営業時間が長く、いつでも誰か担当者がいて、待たずにスムーズに物事が進みます。過剰なくらいのサービスがあって、消費者もそれに慣れていて、そのサービスレベルを維持するために、多くの人が休めないのです。

 

 これまで行われてきた働き方改革のような取り組みの中では、「労働時間短縮」と「生産性向上・効率化」という矛盾した二兎を追っています。そのための手段は、IT化やリモートワーク、さらに人間の集中力を高めるなどというものまでありましたが、この効率化の中に「サービス低下」を含めなければ、つじつまを合わせるのは難しいということです。

 

 日本でも最近は小売業を中心に、営業時間の短縮、定休日の復活、正月休みの延長などが行われ、運送業では配達の時間帯指定が制限されたりしましたが、これは今までの便利さの提供をあきらめたということであり、ドイツを手本にしたとしても理にかなったやり方だと言えます。

 今後はどんな業界でも、納期調整や有料無料の線引きなど、考え直さなければならないことがいろいろありそうです。

 

 日本社会でどこまで許容されるのかはわかりませんが、「便利さの放棄」「サービス低下」を、働く者同士のお互い様として許容し、やらずに済ますことや後回しにしていくことも考えていかなければ、本当の意味での改革は進まないのだと強く思います。

 

 

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