小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「似た者同士」でかたまり過ぎていないか
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ある会社の社長ですが、少し人見知りのせいもあるのか、自分の周りを似た者同士で固めたがるところがあります。
確かに自分の腹心のような人物に気が合わない人を置くことは難しく、どこかで通じ合う人材でなければそういう役割は任せられませんが、それも程度の問題であり、許容範囲の広いリーダーのほうが様々な視点からの意見を聞くことができます。
自分とは違う生い立ち、違う学歴、違う性格、違う職務経験などを持った人を自分の身近に置ける度量があれば、必ずいい効果が得られるはずです。
しかし最近は、どちらかというと自分と異なる意見に対して、それを受け入れないだけでなく必要以上に攻撃したり排除したりする傾向が目につきます。知り合いは大事にするけれども、それ以外の他人には厳しいとか、何でも敵か味方かで分けようとするようなことで、「寛容性が失われている」などと言われるのも、そんなことがあるように思います。
数年前ですが、ある主要経済団体の会長と18人いる副会長の経歴について書かれた新聞記事に、「恐るべき同質集団」とあり、出身企業はこの30年で多様化したと評価する一方、人間の属性の多様化はまったく進んでいないとありました。
挙げられていた内容は、
・ 全員男性で女性ゼロ
・ 全員日本人で外国人ゼロ
・ 最年少でも62歳で、50代すらいない
・ 全員がサラリーマン経営者で起業家はゼロ
・ 全員が転職経験を持たない生え抜き
といったものです。
さらに出身大学でも東大が12人と圧倒的で、以下一橋大が3人、京大、横浜国大、慶応大、早稲田大が各1人とのことでした。
一人一人は有能で実績がある方々なのは間違いないでしょうが、ここまで同質の人を集めるのは、よほど狭い交友関係の中で互選したのか、いずれにしてもかなり意識的に集めなければ、なかなかこうはなりません。
私が気になるのは、もしかするとそれほど意識していなかったにもかかわらず、結果的に似た者同士ばかりが集まっているのではないかということです。
トップリーダーの人たちが、いつも似た者同士だけでつるんで意見を交わし、それで物事を決めていたとしたら、いくら視野が広い人だったとしても、やっぱり思考は偏ります。似た者同士だけの議論で「そうだそうだ」となって、それが全体意見のように進んでいってしまう怖さがあります。
かつての日本企業の強みは、同質性の高さによるチームワークの良さが、様々な局面で力を発揮したためと言われますが、今は逆にそれが足かせになり、イノベーションが生まれにくくなっています。イノベーションは、異質な人たちの多様な意見の中から生まれてくるものです。
「似た者同士」は気楽ですが、それは友人までとして、ビジネスの中では意識的に「異質」な人たちと付き合う必要があると思います。
みんな「似た者同士」でかたまり過ぎていないかが気になります。
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