
小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ過重労働が起こる職場に共通する「人を見くだす体質」
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過労自殺といった仕事にまつわる不幸な事例は、相変わらずなくなりません。また、亡くなるまでには至らなくても、同じ職場で同じようなことが繰り返される例は、比較的多いと感じます。
例えば、広告代理店大手の電通では、社員の過労自殺に関する企業責任が認定された判例となる事件を引き起こしていますが、その後もまた同様の事件を起こしています。
会社としては過去の事件を反省して、改善に向けた取り組みをしているような話を聞いていましたが、結局変わっていませんでした。
こういう場合の多くは、上司が労働実態を知っていたにもかかわらず、当事者意識がないのかそれを改善しようとはしていません。また、セクハラ、パワハラまがいの行為が絡んでいることも多く、外見を揶揄していたり性差別のような言動もあったりします。
これまで私が多くの会社を見てきて、このような労働環境に関する問題を引き起こす会社に共通しているのは、「他人を見くだす」という風土を持っていることです。「自分よりも下」と見た相手に対して、理不尽な強制、一方的な服従要求、人格否定のようなハラスメントが平然とおこなわれていたりします。これは個人の性格による場合もありますが、組織全体の風土になっていることもあります。
この「人を見くだす体質」の職場にみられる組織上の特徴として多いのは、外部からの人材の流入が少なく、さらに年功序列の意識が強く、年次と序列が入れ替わる事象がほとんどないことです。
序列が固定化された組織ということですが、これは個人よりも組織に由来する問題であることがほとんどです。
「人を見くだす体質」を改善するには、方法としては単純で「固定化された序列を崩す」ということです。年次によらず実力に見合った役職任命がされ、自分の部下が上司になるような可能性があれば、パワハラなどは起こりにくくなり、さらに中途採用をはじめとした外部からの人材が増えてくれば、既存の序列はだんだんと不明確になり、年次だけで上下関係を言いづらくなっていきます。
ただ、中途採用で外部からの経験者を受け入れているような会社でも、実際にはそこまでドラスティックに扱うことはせず、年令や年次の逆転はあえて一部に留めているようなところが多いです。
年功的な色彩が強い組織ほどその傾向がありますが、その結果として「人を見くだす体質」という組織風土はそのまま温存されてしまいます。そんな職場環境が、いつか不幸な出来事につながってしまうのです。
「人を見くだす体質」の職場というのは、見くだされている部下の側はもちろん、見くだす態度を取っている上司の側にとっても、良いことは何一つありません。そこで働く人たち全員にとって、お互いに不快な職場でしかなく、そんな職場に属するチームが良い成果をあげられる訳がありません。
よりよい職場環境作りは、決して社員の甘やかしではなく、会社の業績向上のために必要なことです。組織で仕事をして成果を上げるために、「人を見くだす体質」はなくしていかなければなりません。
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