小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「伝えたい」と「知りたい」があってコミュニケーションが生まれる
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少し前ですが、あるテレビ番組で、「子供しか入れないお菓子屋さん」の話題を目にしました。
本店の横に、小学生以下限定で大人は入れない店舗があり、その中ではお菓子の製造工程が見られたり、目の前で焼きたてのお菓子を焼き上げてくれたり、ゲームで当たるとシールがもらえたりと、入店した子どもたちにしかわからないサービスがあるそうです。
お店のオーナーがこの場所を作った理由は、その店の中で何が売られているのか、どんな風になっているのかを大人が知りたければ、中に入ることができる子供に聞くしかなく、そうすれば大人と子どもとのコミュニケーションのきっかけになると考えたからだそうです。子どもの「伝えたい」と大人の「知りたい」を生み出して、昔の町内会のようなコミュニケーションを復活させたかったといいます。
私がいろいろな会社から話を聞く中でも、課題として挙げられることが多いのはコミュニケーションに関することですが、この話から考えてみると、この「伝えたい」と「知りたい」が両立していない場合がほとんどです。
・社員があまり信頼できない上司に「伝えたい」とは思っていない
・自分のミスや不手際などできれば言わずに済ませたい「伝えたい」とは思わないようなことである
・お互いが自分のことで精いっぱいで、相手のことを「知りたい」と思う余裕がない
・そもそも上司や部下など、相手のやっていることには興味がなくて、「知りたい」と思っていない
などがあるでしょう。
さらに、部下は現場で起こっている苦労を「伝えたい」のに、上司はその結果だけが「知りたい」など、思いが食い違っていることもあるでしょう。
これを改善するには、このお店のような工夫が必要です。言いづらいことを頑張って伝えたら結果的に良かったとか、興味がなくても聞いているうちに興味深い情報が得られたとか、そういう経験があれば「伝えたい」「知りたい」のきっかけになるでしょうし、伝える、知るという行動自体に何かインセンティブがあれば、それが「伝えたい」「知りたい」という気持ちにつながっていくこともあるでしょう。
コミュニケーションというのは、無理やり実行させようとしてもなかなかうまくいきません。会議をおこなう、面談をおこなう、ITインフラを作る、報告を義務付けるといったことだけでは、うまくいかないことも多いでしょう。その理由はお互いの間に「伝えたい」と「知りたい」が生み出されていないからです。
このお店の例を見ていると、何か人の気持ちを刺激する仕掛けがあれば、何かきっかけを生み出すことができそうです。親子のようにはいかないかもしれませんが、組織作りのためにはこういうことも考えていかなければならないと思います。
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