小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ社内事情でも意識しなければならなくなった「社外からの目」
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人事制度のような仕組みを作る上で、当然ですが重視されるのは社内の事情です。その制度で従業員満足は高まるのか、生産性は上がるのか、業績は向上するのか、社員のやる気は増すのかなど、制度の検討過程でいろいろ議論されますが、あくまで社内で起こる範囲のことです。
しかし、最近はそんな社内事情にとどまることでも、「社外からの目」を意識する企業が増えてきました。
例えば、「実力主義で30代の課長が○人いる」「女性が働きやすい職場で、育児休業の取得者が○%である」などと、ホームページなどで断片的に掲載されていることがありますが、若い課長がいるから実力主義とは限りませんし、女性が育児休業を取るから働きやすいとも限りません。
そもそも実力主義には、ギスギスした個人プレーのイメージもありますし、育児休業にしても、復職の状況はどうなのか、それに向けたサポートはあるのか、さらに男性はどんな状況かなど、関連する要素はいろいろあります。
これを「社外からの目」で見たときは、疑心暗鬼がうまれてしまうので、必ずしも良いブランディングにはなりません。
今までであれば、社員は内輪の論理で抑え込み、社外にはおいしいところだけを選び出してアピールしていれば、それで済んでいたようなところがありますが、最近はこういう社内制度も企業ブランディングに利用する動きが盛んになっています。
先に挙げたもので言えば、実力主義の中身を吟味して、社外からもわかりやすい仕組みと運用を進める、育児休業の仕組みと運用を見直して、社外からも評価されるような実績を作るといったことです。
社外から「いい会社」と見られれば、社員はプライドが満たされ、良い口コミが増え、優秀な人材の定着率は上がり、当然会社のブランド価値もアップします。社内の取り組みであっても、それが誰から見ても良い物であれば、そこに社外の目を巻き込むことで相乗効果が生まれます。
ある会社では、育児休業からの復職100%を目指した取り組みをして、その達成を広報することで、子育て世代の女性からの応募が増えました。
またある技術系の会社では、柔軟な勤務体系を導入し、その実績を社外に見せていくことで、優秀な技術者の入社が増えました。
こんな「社外からの目」を意図的に活用するために、他社の社内制度に関する調査をおこない、あえて先進的な仕組みを導入して実績を作ろうというような会社も出てきています。
人事をはじめとした管理部門では、自社のこと以外への感度が少し鈍い傾向があります。社外の情報収集は私たちのようなコンサルタントがよく支援する部分ですが、自分たちがやっている社内活動が、対外的な企業ブランディングに関わっていることを意識しなければならない時代になっています。
内輪の論理ばかりを重視したり、社内調整ばかりに力を使っていたりするようでは、いつの間にか時代から取り残されてしまうかもしれません。
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