小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ天職がいつまでも天職であり続けるとは限らないという話
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今の仕事が自分にとって「天職である」と思えるならば、それはとても幸せなことです。
「自分はそもそも天職に出会っていない!」という人は大勢いると思いますが、これは天職に出会ったといわれる人でも、それがずっといつまでも天職であり続けるわけではないというお話です。
私の知人に、エアロビクスのインストラクターをしている女性がいます。昔から体を動かすことが大好きで、友人の誰からも「天職だね」と言われるそうです。
ただ、ある時本人に話を聞くと、「最近、運動するとストレスがたまる・・・」などと言います。聞けば、どんなに体調が悪くても、どこかが痛くても、気分が乗らなくても、みんなの前で目一杯の笑顔で、誰よりも元気に、仕事としてエアロビクスをしなければならないのが、とてもつらいことがあるそうです。
実は同じ職場の中で、他のインストラクターでも同じようなことを言う人が何人もいるらしく、そんな人たちが、自分たちの「天職」といわれる仕事とは正反対の、例えばスポーツクラブの案内状を送る事務作業などがあると、みんながそれをやりたがって仕事の取り合いになるそうです。その事務作業をやりながら、「私って事務が天職かも・・・」などと思うそうです。
これは、何人かのプロスポーツ選手が話していたことですが、周りからは「好きなことが仕事にできていいね」と言われ、選手はみんなその競技が好きで好きでたまらないのだと思われていて、いつも楽しくて仕方がないだろうと言われるそうです。
でも、本人たちにしてみれば、好きなことではあるけれど、競技することは仕事であり、技術を伸ばして結果を出さなければならない責任があり、毎日が楽しいなどという感覚ではないと言う話を聞いたことがあります。
同じくカーレーサーの人も、周りから「レースのスリルが味わえていい」などと言われるそうですが、本人にとって、レースは日常の仕事であり、レース中は車をいかにコントロールするかばかりを考えていて、怖いと思うことはあっても、楽しいとかスリルとか、そんなことを感じる余裕はないそうです。
こういう職業の人たちは、それぞれ特別な才能があってのことなので、それはまさに天職といえると思いますが、それでも仕事としてたずさわっている中では、常に天職と思ってやっている訳ではありません。
自分に向いていると思って始めた仕事でも、周りの誰から見ても天職と言われる仕事であっても、自分では天職と思えなくなる時があります。
私が思うに、たぶん天職というのは、自分自身の主観的な捉え方であって、自分の感情によって常に揺れ動くものです。うまくいっていなければ天職と思えないでしょうし、ある日突然、今まで以上の天職に出会うかもしれません。
逆に言えば、今取り組んでいる“天職でない仕事”でも、それを天職と思って取り組めば天職になり得るということです。
「今の仕事がつまらない」という人はたくさんいるはずですが、その視点をちょっと変えてみると、意外と天職らしきものが見えてくるかもしれません。
「天職に出会っていない人」の天職は、実はごく身近に、すぐ手の届くところにあるのではないでしょうか。
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