
小笠原 隆夫
オガサワラ タカオお金で効果的に動機づけしている一例
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特に最近、金銭による動機づけが難しくなっていると言われます。役職や報酬にこだわらない人が増えていると言いますし、ある実験の結果によると、「金銭的報酬は、人の内発的動機づけを低下させる」などということもあるようです。
ただ、先日お話をうかがったある会社の社長は、これとは少し異なるお話をされていました。社員数40名ほどの技術系の会社で、機械装置の研究開発と製造を行なっているそうですが、過去10年間連続して売上が二ケタ成長をしているという好業績の会社です。
様々な経営施策や人事施策を実行しており、興味深いものが多々ありましたが、印象に残ったのは「お金じゃないというけど、やっぱりお金です」という社長の言葉でした。もう少し付け足すと、「お金はすべてではないけれど、お金をもらって困る人はいないし、やっぱりお金は重要な要素だ」ということです。
「やっぱりお金だ」などと言われると、ついついよくないイメージで見てしまいがちですが、実際にやっていることの中身を聞いていくと、それでうまくいっている理由がよくわかりました。お金をうまく口実に使いながら、実はやっぱり「お金がすべてではない」という形になっているのです。
まず、何だかんだと言って褒賞の頻度や数がやたらと多いです。年2回のボーナスや昇給といった一般的なこと以外にも、いろいろなテーマでの金一封のようなものが年中あるようで、ただ何もしないでいるだけではダメですが、その人のできることで会社に貢献していれば、誰でも何かがもらえるチャンスがあります。
また、こういう好業績の企業なので、社外から表彰されることも多いようですが、そこでもらった賞金などは、すべて会社の祝賀パーティーなどで社員に還元されるそうです。
何よりも大きいと思うのは、社長自身が毎日の朝礼、年2回の評価面談、その他日常業務の中で、全社員と頻繁にコミュニケーションを取っていることです。
現状の話を良く聞き、ある時はハッパをかけ、ある時はやり方を一緒に考え、時には社員の間から出てきた提案に対して、即断即決で金一封をニンジンがわりに約束することもあるそうです。
とにかく社員をよく褒めていて、実行したこと、成果が出たことを具体的に褒めています。みんなの前で褒めたり、それをイベントにしたり、そのやり方はいろいろ工夫しているようです。
社員に対しては、もちろん厳しい要求をすることもありますが、常に社員が納得することを重視しているそうです。
金銭的報酬は「外発的動機づけ」と言われ、回数を重ねるほどにモチベートされる期間が短くなり、効果が薄れていくと言われます。
ただこの会社では、このように多くの機会が設けられ、頑張り次第で誰にでもチャンスがあり、さらに「褒められる」「仲間からの賞賛」「自分が認められる」など、自分の内面から湧き、持続性があるといわれる「内発的動機づけ」につながる要素がセットになっています。
いろいろな取り組みをマンネリ化させないサプライズが多いことで、「外発的動機づけ」の弱点を補っています。
「給料を上げたって・・・」「賞金を出したって・・・」という否定的な話は良く聞きます。ただ、うまい使い方をすれば、お金も動機づけの道具の一つとして、十分に機能するのだと感じた一件でした。
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