小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「働かないオジサンの言い分」に似ていると感じたこと
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ウェブ上の記事で、「働かないオジサンの言い分」という話がありました。
50代読者からの投書だそうで、その内容は
「年功序列の給与の中で、若い頃は安月給で働かされ、会社には十分貢献してきたはずで、いま多少働きが悪くてもその頃の“貸し”がある。途中で処遇を引き下げたり、クビを切られたりするようなやり方はルール違反だ。」
「若者は“使えないのに給料が高い”と言うが、自分たちも年をとれば、能力は確実に低下するし、体力も落ちる。自分たちもいずれ若者に非難されるかもしれないとすれば、それが天にツバする行為だと早く気づくべきだ」
というものでした。
私はこの話に同情する点はあるものの、年功序列が崩れてからはもうずいぶん時間が経ちますから、今さらこんな話をするのは、自分の境遇を他責にしているようで、あまり良い感じはしません。
そもそもこの考え方では、会社だけでなく、本人も不幸になっていると思います。
この話を聞いた時、私は公的年金で言われる「世代間扶養」という言葉を思い出してしまいました。 “現役世代が受給者を支える仕組み”のことです。
所管官庁は、いろいろな理屈で「若い世代が損をする仕組みではない」と言っていますが、今の財政状況を考えれば、そう言い切ってしまうのはどう考えても無理があります。
「個人や世代の差による損得を論じる性質のものではない」とも言っていますが、社会保障の話を精神論で言いくるめるようなニュアンスを感じ、そこには違和感を持ちます。
この両方の話に共通するのは、「昔の貸しをいま(もしくはこれから)返してもらう」という考え方です。しかも比較的長期間に渡った貸し借りです。
ここで言えるのは、将来がどうなるかということは、結局その時にならなければわからないので、借りたものを遠い将来でもしっかり返すというのは、結構強い縛りがないと難しいということです。
もしも先に貸しを作って、それが返ってこないことが許せないならば、貸しは作るべきではないですし、借りたのに返そうとしないのもまた問題です。
そもそも長期の貸し借りでバランスを取ろうということ自体が、問題を生む元凶ではないでしょうか。
給料であれば、その時の働きに見合った金額で、その都度精算するべきですし、年金もある程度の再分配はするとして、基本は個人の積み立て方式にした方がわかりやすいでしょう。少なくとも「貸しがある」などといって、あとからもめることはありません。
それぞれのことは、簡単に変えられない事情があるでしょう。ただ、長期に渡る貸し借りという考え方をほどほどにすれば、こういう問題はずいぶん軽減されるのではないでしょうか。
助け合いや相互扶助の考え方は大切ですが、「むかし貸したものを今返せ」「むかし借りたものはもう時効」のような話になることは、できるだけ避けるべきだと思います。
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