小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「自己キャリア」なのに会社まかせで良いのか
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今から数年前、企業内のミドル層からシニア世代の、キャリア自律を考えるというイベントに参加したことがあります。
その時に感じたのは、特に大企業に属している人や安定した職業についている人ほど、自分自身のキャリアを自分では考えず、会社まかせにしている傾向があったということです。最近は少し変わりつつある空気を感じはしますが、やはり基本的な傾向は同じです。
こういう人たちのマインドチェンジをするべく、企業では年齢の節目ごとに自分のキャリアを考える研修を実施したり、キャリアカウンセラーを配置して相談窓口を設けたり、その他いろいろなプログラムを設けています。国のレベルでも、ミドル、シニア層のキャリア自律を支援するいくつかのプロジェクトが動いています。
少子高齢化の時代を迎えて労働人口自体が減っていく中では、限られた労働力をうまく活用するには、人材の流動化や再配置が必須となってきます。これらの取り組みが重要であることは間違いありません。
ただ、こういう動きに対して私が思うのは、自己キャリアというまさに自分自身のことなのに、それほど手間ひまをかけて会社や周囲が注意喚起をしなければ、自分で考えようとしない人がこれほどたくさんいるという問題です。
自分自身のことを平気で会社まかせにしていることへの疑問とともに、会社や世間の対応も、当事者に対してあまりに過保護という感じがします。
裏を返せば、会社まかせでも平気だという意識が、それほど浸透しているということです。
「仕事は上から降ってくるものだから、自分でどうこうできる物ではない」「やりたい仕事や部署異動など、自分の意志ではどうにもならない」など、自分で決めないという意識が定着してしまっているということなのかもしれません。
ただ、今はそんな人まかせで安泰の時代ではありません。どんな優良企業でも、今後5年のうちにどんな展開になるのか、本当のところは誰にもわかりません。
将来を見通すことがいろいろな面で難しくなっており、これからどんなシナリオで進むかによって、関わる人たちのキャリアには大きな影響があります。
これまでの日本企業におけるキャリアの積み方というのは、「マラソン型」と言われています。長いレースに参加し続けることはできますが、一度集団から脱落すると、その後の挽回は難しく、序列が固定してしまいます。
これが例えばインドなどであれば、「毎日が100m競争」のようなイメージだそうです。日々の結果によって序列が常に変わっていき、次のレースに必ず参加できるかどうかの保障がありません。
キャリアの自律ということは、自分のキャリアを継続的に考えながら行動を続けるということなので、当事者である本人が考えるのは当然だと思いますが、実際にはなかなかそうなってはいません。問題意識は持っていて、考えようとはするものの、何をすればよいのかわからないという人もいます。
「自己キャリアを考える」といっても、それほど難しく考える必要はなく、まずは自分の好きなことや得意なことを整理してみるようなことでかまいません。周囲の人にアドバイスをもらったりするのも良いでしょう。
いずれにしても、自己キャリアを会社まかせにして、自分で考えていないということは、とても怖いことではないかと思います。
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