小笠原 隆夫
オガサワラ タカオあらためて思った「すぐに身につくことはすぐに忘れる」ということ
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年明け早々の頃、特にインターネット上の様々な記事や情報を見ていて思ったことがあります。それは、「ダイエット」に関するものがやたらと多いことです。
“正月太り解消”と称して、その方法や心得が出ていますが、裏を返せば、それほど多くの人が、この時期には興味をもって見ている内容だということでしょう。
やっぱり正月というのは、家族や親戚が集まって、食べたり飲んだりする機会が多くなりますし、それが何日も続き、なおかつ体を動かす機会は少なくなりがちですから、急に体重が増えてしまうようなことも多いのでしょう。
ただ、多くの人にとって、たぶんこれは毎年恒例のことで、年明けの仕事が始まって1、2週間もすれば、特に意識して何かをするということでもなく、ほとんど元に戻ってしまうのではないでしょうか。
なぜそう思うかといえば、例えば、夏ごろになってもまだ「正月太りが・・・」と言っている人には、いまだかつて出会ったことがないからです。
結局、短期間の非日常で身についたものは、日常のリズムに戻れば、すぐに消えて元に戻ってしまうということです。元に戻すために、それほど多くの努力は必要ないでしょう。
一方、同じ「ダイエット」でも、長い期間をかけて身についたものは、そう簡単にはいきません。今頃の時期は「夏の薄着の時期に向けて」という言い方のダイエット広告が多いようです。その後も「食欲の秋の対策」「冬の着ぶくれ防止」など、ほぼ一年中「ダイエット」に関する情報は出続けています。
そうやって年中広告されているということは、それほどうまく行かない人が多いということであり、そういう人ほど、それなりの期間でコンスタントに「ダイエット」を続けなければなりません。相当の忍耐と努力が必要でしょう。
このように、長期にわたって身についた欠点、マイナスは、それと同じだけの期間をかけなければ解消できません。
これは、見方を変えれば、長い期間かけて身についた強み、プラスは、同じく簡単に失うものではないということも言えます。長期で蓄えた技術、知識といったものは、そう簡単には錆びつかないということです。
私は企業の人材育成にかかわるので、ついその場面と重ねてしまいますが、そこでもこれと同じようなことが言えます。
例えば、相当に刺激的な研修などをやり、その場では盛り上がって、変化する様子が垣間見えていたとしても、その後何も手を加えなければ、3か月もすれば何事もなかったかのように元に戻ってしまいます。
研修の専門会社などでも、このあたりは当然わかっていますが、自分たちが日常的にかかわり続けることはできないので、あえて見えやすい目先の研修効果に意識が偏っている場合があります。また、企業の研修担当者も、それで良しとしているようなことがあります。
企業では常に短期的な成果が問われ続けるので、やむを得ないところもありますし、目先の効果が見えるだけでも立派ではありますが、私はこういう取り組みには、どうしても「結局うまくいかないダイエット」と同じことを感じてしまいます。
やはり人材育成を考えるにあたっては、継続したコンスタントな取り組みが必要だということは変わりません。
「すぐに身につくことはすぐに忘れ、長くして身についたことはなかなか消えない」ということを、あらためて思います。
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