小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「お試しできっかけを」という話
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あるテレビ番組で、若者に消費を促すには「お試しできっかけを与えることが良いのでは」という話がされていました。
若者の消費意欲が少なくなっているという話がありますが、これは、ただ収入が少ないとか節約したいなどというばかりではなく、ネットなどの間接的な情報だけで、持っていないものでも使った気になったり、食べたことがないものも食べた気になっていたり、行ったことがないところでも行った気になってしまったりということがあるのだそうです。
最近は、特に男子学生があまり海外旅行に行こうとしないという話がありますが、当事者にその理由を聞くと、「コンビニもないような日本より不便な ところに行きたいと思わない」「行かなくてもネットで見ていればどんな所かはわかる」などと言っていたという話があるので、実際そんな傾向はあるのでしょ う。
これには親や会社の上司、先輩など周囲の人たちの責任もありますが、未知のことを経験する機会が少なくなっているということがあるのだそうです。
既視感、既知感ということらしいですが、それにプラスして失敗しなくないという心理が強いこともあり、行動に移すことを躊躇したり、やたらと慎重だったりということがあるのだそうです。
これをお試しで使わせる、お試しで食べさせる、お試しで行ってみるということを通じて、消費行動への躊躇を取り除いていくということらしいです。
人事の世界でも、これと同じように感じることはあります。
例えば今話題のブラック企業の話では、就活生がそういう会社には入りたくないとネット上の情報を調べ、その慎重さが過剰になり過ぎて、ちょっとでも気になることがあるとなかなか応募に踏み切れなかったり、活動すること自体も躊躇してしまったりというようなことがあります。
最近は「インターンシップ」の活用が言われますが、これもお試しの一種で、社会に出ていく不安や躊躇を減らすためということでは、同じようなことなのだろうと思います。
自分の昔の経験で言えば、会社の上司などに自分では行けないようなお店に連れて行ってもらい、そこにまた行きたいと思うかどうかは別として、そんな経験をしたということが後々で役に立ったこともありました。
最高級と最安価のどちらも知っていれば、価格の幅が認識できるので、自分が出会ったものが一体どんなレベルのものかという尺度を持つことができますし、一度経験していれば、振る舞いやマナーをどうすべきかもわかります。
今思えば、自分の上の世代の人たちから、何かとお試しの機会をもらっていたということです。
世代を問わず、人間は未知のことには何らかの不安や躊躇があって当たり前です。
買い物に失敗したくないと思えば、事前にできるだけ情報を集めて失敗がないように準備しますし、さらに実物を実際に試す事ができたら、失敗するという不安や躊躇はなくすことができるでしょう。
これは新しい仕事でも、新しい職場でも、新しい人間関係でも同じことだと思いますし、この「お試し」にあたるような取り組みを、いろいろな形で実施している会社というのは、あまり目立ちませんが実は結構あります。
特に経験が少ない若手社員に対しては、「お試しできっかけを」という考え方は、会社の中でも外でも、意外に多くの場面で当てはまるように思います。
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