小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「自己キャリアの会社任せ」への危惧
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主に大手企業のシニア層からミドル層の人材に対して、ただのぶらさがり人材になることを防ぎ、社外でも通用する人材になるべく、研修を通じてマインドセットをする取り組みをしている団体のお話を聞きました。
大企業にいると、自社に順応しすぎて視野が極端に狭くなっていることがあり、いざ自分の先行きが見えてきた時、どう対応すればよいかがわからなくなってしまうということがあるそうです。
実際におこなっているカリキュラムはすばらしく、参加者の感想を聞くと、多くの気づきがあって意識も180度変わったということで、取り組みに見合うだけの効果はあるのだと思います。
特に自社では当たり前だと思っていたことが、実は世間一般とはかけ離れていて、自分たちが視野狭窄してしまっていることに関する気づきが多いという感じでした。
よく言われる人材流動化に向けた施策の一環としても、とても重要で意義がある取り組みだと私は思います。
ただ、ものすごく気になることが一つだけありました。
それは、社会人経験が豊富なはずのミドル、シニア層で、なおかつ大手企業で活躍できるような優秀な人材が、そこまで手間ひまをかけて、手を変え品を変えで周りから刺激を与えなければ、自分の視野の狭さに気づく事ができないほど、自社の内向きな考え方に染まってしまっているのかということです。
つぶれる心配がなく、よほどの不祥事でもない限りクビになることはなく、手厚い処遇や福利厚生があり、常に自分の居場所が確保されている環境に20年、30年と身を置けば、必然的にそうなってしまうのかもしれません。
良い捉え方をすれば、心からの愛社精神と高い帰属意識によるものと言えるのかもしれませんが、私はあまりにも会社に依存しすぎている気がして、正直ちょっと怖い感じがしました。言葉は良くありませんが、「自分のキャリアを会社任せにしている」と思いました。
会社というのは、資本主義の原則に則って動くものであり、自分の居場所などは保障されないのが本来の姿です。しかし、それではあまりにも不安定な労働環境になってしまうので、解雇規制をはじめとした様々な制約がある訳です。
ただ、こういう状況を見てしまうと、実は過度に甘やかしてしまっている側面もあるのではないかと思ってしまいました。
私は会社と社員が対等な立場にあってこそ、それが良い成果につながると思っています。何の制約もないと、雇う側の力が強いのは当たり前なので、労働者保護の観点は絶対に必要だと思います。
しかし、だからといってそれに甘えていれば良い訳ではなく、働く側も自立して、変化に対処できるように自己研鑽しておく必要があります。
せっかくの良い環境が、「自己キャリアの会社任せ」につながってしまっているのであれば、それは働く人にとって好ましいことではありません。
だからこそ、今回うかがったような、マインドセットをし直すような取り組みが必要なのかもしれません。
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