小笠原 隆夫(経営コンサルタント)- コラム「良いことばかりでないかもしれない「研修制度の充実」」 - 専門家プロファイル

小笠原 隆夫
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小笠原 隆夫

オガサワラ タカオ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
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良いことばかりでないかもしれない「研修制度の充実」

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験 2016-03-15 08:00

 採用活動のように、特に対外的な自社のアピールが必要な場面では、「整った研修制度で能力を伸ばすことができる」など、「研修制度の充実」を掲げる会社をよく見かけます。

 また応募者の側も、特に新卒採用や未経験者採用の場面では、「研修制度の充実」を会社選びの条件とする人が多いように思います。

 

 「教育環境が整っている中で教えてもらいたい」「優秀な上司に自分を成長させてもらいたい」など、自分の能力が少しでも早く伸ばせる環境がある会社が望ましいと考える気持ちはよくわかります。充実した制度を活用して早く成長することができれば、それは会社にとっても望ましいことですし、自分のためにも良いことです。

 

 ただ、そういう環境を望む人が、入社してから自分で本当に努力するかというと、必ずしもそうとはいえないことが多いように思います。

 与えられる課題に対してそれほど積極的に取り組む訳ではなく、かといって何もしない訳でもなく、学生時代と同じようにとりあえず単位が取得できる60点程度が取れればよい、そんな感じの取り組み方です。

 

 こうなってしまう理由を考えてみると、会社に対して「研修制度の充実」を求めているということは、どこか本音の部分で、「自分の仕事は誰かが教えてくれるもの」「自分の能力向上は会社から与えられるもの」という受け身の姿勢、人任せの気持ちがあるのではないかということです。研修制度への依存心が見受けられ、そもそも自分の力で成長していこうという意識や意欲が乏しいとも言えます。

 

 これは、決して会社の研修制度が不要と言っている訳ではありません。会社として教えるべきことはきちんと教える必要があり、そのための環境作りは絶対に必要です。

 

 ただその一方で、研修などの形でカリキュラム化して教えられることは、仕事の中でも一部のことに限定されます。実務でなければ経験できないことも、一度は失敗しなければわからないこともあります。何でもかんでも他人が教えられる訳ではありません。

 

 また、会社はただ学ぶための場ではないので、結果と育成のバランスを取る必要があります。新しい経験をさせるにしても、会社として痛手を負うような致命的な失敗はさせられません。

 

 本人に何をどの程度やらせるかを判断する上で、ただ言われたことだけしかやらない受け身の姿勢の者は、自分から発信する力やチャレンジする意識が弱い傾向があります。そうなると今の能力を超えるような仕事は任せづらく、結果として経験できる仕事の幅や難易度は抑えられ、成長する速度は遅くなってしまうでしょう。

 

 会社が「研修制度の充実」を売り物にするのは、悪いことではありません。また応募者や社員が、会社に対して「研修制度の充実」を望むのも、これまた悪いことではありません。

 ただそこには、自分の力で学ぼうとしない、「キャリアは会社が与えてくれるもの」という意識を助長している可能性があります。

 

 充実した制度には、必ずそれにぶらさがる者が出てきます。「研修制度の充実」も、必ずしも良いことばかりではありません。現状がどうなのか、よく注意しておく必要があると思います。

 

 

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