小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ年を重ねた上での名誉欲の理由
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この時期は様々な企業や組織で、人事異動や役員改選など運営体制の変更が行われますが、これは別の何人もの方々から奇しくも同じように聞いたお話です。
それは、業界団体や親睦団体などで、一部の人が役員に居座って組織を私物化していたり、不透明な役員選出をしていたり、定年制や多選制限などの決まりを反故にしようとしたり、肩書を欲しがる割には何も仕事をしないなど、組織の運営体制を批判する内容でした。
お話で共通していたのは、年齢が比較的高い人たちであること、経営者や事業主など組織を仕切る立場の人が多いことでした。
私はまだこの気持ちはよくわかりませんし、これは個人の性格による部分は大きいとは思うものの、この手の問題が起こる組織は、概して年齢層が高い組織、仕切りたい人がたくさんいる組織が多いことは確かなように思います。
この理由の一つとして、ある大先輩の社長からうかがった話から、何となく感じることがありました。
この方は、まだご自身が現役の頃から退き方を考えて後継者の育成をし、引退後にやりたいことを思い描き、事前にきちんと計画も準備も行い、ご自分としては万全を期して社長業を引退されたそうです。
しかし、バラ色の生活を思いながら引退はして見たものの、実際に退いてみるとそれまでやりたくて仕方なかったはずのことにはだんだん飽きてきてしまい、どこかで会社のことが気になって仕方がなくなってしまったそうです。
まだ相談役という肩書ではあったので、ちょっと様子をうかがいに会社に顔を出してみると、古株の社員を中心に昔のように温かく迎えてくれ、しかしもう自分が口を出す立場ではないということで、思うことがあっても何もしてやれない、そんな状況があったそうです。
「どこかで引退したことを後悔する気持ちがあるかもしれない」とおっしゃっていました。ここまで計画的に準備をしてきた方であるにもかかわらずです。
「なぜ年を取ると名誉欲が抑えられなくなるのか・・・?」
それは、年令を重ねてある立場まで到達すると、その役職や肩書がなくなってしまうことで、自分の周りから人がいなくなり、社会とのつながりが切れてしまうのではないかという不安や寂しさが強くなり、今の立場にしがみつこうとしてしまう、そういうことに一因があるのではないかと思います。
若いうちと違って、自分の最終到達点がある程度見えてくる頃ですから、余計にそう考えてしまうのでしょう。
また、そんな気持ちの人ほど、自分の意志で辞めるのは良くても、年齢や規則と言ったことで、自分の意思に関係なく退かなければならないことが我慢できないようです。
人間の欲求の最終形は「名誉欲」だといわれますが、その裏には今まで通りに自分を尊重してほしいという気持ちがあって、ここにこだわりすぎる人は、もしかすると他に自分の存在を示せる世界を持っていない、そんな感じがします。
私がうまくできるかはわかりませんが、少なくとも今から、自分なりに存在感を感じられる世界を、いくつも作る努力だけはしておきたいと思っています。
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