小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ言われてやる風土、気づいてやる風土
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いろいろなお店で食事をしたりサービスを受けたりする中で、特に最近は嫌な思いをすることがなくなりました。どこに行っても接客やサービスのレベルが高くなっていると思います。
先日もあるお店で、ランチタイムを少し過ぎて空いてきたころでしたが、会計後に出入り口まで送っていただき「午後もお仕事頑張って下さい!」と声をかけられました。全員がそういう対応をしていた訳ではないので、たぶんマニュアルではなく本人の気づきで声掛けをしてくれたのだと思います。特別に気遣ってもらった気がして、よけいにうれしかったです。
“指示待ち”というのは概して非難されがちですし、言われてやるよりは進んでやる、本人が気づいてやる方が良いと捉えられることが多いと思いますが、これは「良い組織」ということと多少矛盾する部分もあります。
「良い組織」の定義が“統制が取れた組織”、“指示命令がはっきりしている組織”だとすると、リーダーシップを発揮するリーダーがいて、そのリーダーが適切に指示をして、その指示通りに速やかに実行させる組織が良い組織ということになります。実際に私が見てきた中でも、社長のリーダーシップが強いとか、仕事ができるリーダーがいるとか、そんな会社は十分に「良い組織」ではありますが、その一方でそういう会社の方が、実は「言われてやる風土」であったりします。リーダーが何でも指示してやらせてしまうのです。
これでは「良い組織」イコール「言われてやる風土」ということになってしまいますが、「言われてやる風土」では、自分で気づいたり考えたりする経験が少ないので、リーダーに成長できない、自分で考える姿勢があるリーダー資質を持つ人材が、いちいち指示されることに嫌気がさして辞めてしまう、などの問題が起こってきます。要は次のリーダーが育ってこないのです。
「強いリーダーシップを持つリーダー」「仕事ができるリーダー」は往々にして人の育成がうまくない場合があります。「名選手”必ずしも”名監督にあらず」という言葉と通じるところがあるかもしれません。
ただ、やはりリーダーはその場の仕事を進めるとともに、人の育成も考える必要があります。これは指示して実行させるだけでなく、「指示しようとした内容と同じ結論に、自分で考えて気づいた形にして導く」ということが必要になります。
「言われてやる風土」と「気づいてやる風土」。どちらが良いということでなく、両立させることが必要なのだろうと思います。
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