頭でわかっているのに、いざとなるとできなくなることがあるのか、そのしくみをご説明しましょう。
通常の情報は、視床で「危険か」どうかが問われ、思考を司る前頭葉が、「これまで似たような体験があったか、どう対処するのが適切か、どういう結果をもたらすか」判断し、その結果に基づき、扁桃体が、最適の感情反応を引き起こしたのち、海馬に、記憶として整然と収納されます。
大きな犬が道の角から現れる、あの犬は、大きいけれど、近所の人の人なつこい
犬だ。安心してそばを通ろう。さっき近所の人の犬とすれ違ったなという風にです。
ところが、生命を脅かす出来事は、扁桃体を直撃し、強烈な恐怖感を煽るとともに、ストレスホルモンのアドレナリンやコルチゾールの過剰分泌を促します。
極度の緊急反応は、外部からの情報を内部の記憶に取り込める形に変換するエンコードのプロセスを阻害します。
そのため、なにがどうなっているのかわからないまま、痛みや寒気、異様な音、極度の恐怖感を体験する乖離現象が起こります。家庭内暴力の被害者が、虐待される自分を離れた場所から眺めていたと表現する現象です。
意味づけがされていないままの恐怖体験は、何の脈絡もない一枚の写真のように、潜在記憶に記録されます。そして、その記憶は、似たような状況が引き金となり、何の前触れもなく、瞬時に、蘇ります。
大きな犬が道の角から現れた瞬間、恐怖で足がすくんだ。あの犬は、近所の人の人なつこい犬だとわかっているのに。犬を見て恐怖を感じる理由は、記憶されていないので、本人は、なぜ足がすくむのかがわからない。
頭ではわかっているのに、いざとなると、なぜか、できなくなってしまうという現象の背景には、このようなメカニズムがあります。
動物は、緊急事態に直面すると、戦うか、逃げるか、固まるかの、緊急反応を起こします。ライオンは戦い、カモシカは逃げ、たぬきやアナグマは、体を硬直させて、死んだように動かなくなるのです。そして、どの動物も、危険が遠ざかると、身震いをして、心身のショックを発散し、なにごともなかったように、元の状態に戻ります。
ところが、人間は、たとえショックなことがあっても、「まあ、まあ落ち着いて」となだめられたり、「たいしたことじゃないでしょ」と一蹴されたり、「大げさだ」と非難されたりして、心身が受けたショックを解放できないことがあります。
たとえ、周りの人にそういわれなくても、自分でも何がどうなったのか理解できずに混乱したり、自己規制が働いて、ショックを飲み込んでしまいがちです。
死の危険にさらされるような出来事でなくても、知らず知らずのうちに蓄積されたわだかまりやこだわりが、いざとなるとできないという要因になる場合もあります。
体が硬直し、絶体絶命、無力感、絶望感に支配される出来事をトラウマといいます。
一人では生きていけないと感じている子供の場合は、拒絶、混乱、驚愕、極端な恐怖も、トラウマの要因になります。
衝撃的な出来事の直後から、一ヶ月以上、死んでしまうのではないかという壮絶な恐怖感が続く場合は、PTSD心的外傷後ストレス障害と診断されます。
健康を害するストレス反応をしっかり理解。
考え方の癖を認識、建設的な行動がとれるようになる認知行動療法の技法を習得して、ストレスを緩和。
記憶のメカニズムを踏まえ、わかっているのに、どうしてもうまくできないことを、努力の感覚なしに、できるようにしていく方法を学習。
実用的なエピソードや実習を織り交ぜ、楽しく学べるストレスマネジメント動画講座をご提供しています。
詳細は、こちらをご覧ください。http://tsurutaikuko.server-cowboy.net/ecc/html/products/detail.php?product_id=32
このコラムに類似したコラム
お正月・・・EMDRの効果を実感 シェシャドゥリ(福田)育子 - メンタルヘルスコンサルタント(2011/01/14 07:26)
心と身体は一体 「心と痛みと身体の痛み」 本多 由紀子 - ホリスティックケア セラピスト(2013/11/03 23:06)
心身に害をもたらす考え方の癖を修正する方法を学ぶ。 鶴田 育子 - 心理カウンセラー(2013/05/08 11:53)
東日本復興支援チャリティーイベント:『リラックスして、ベストを尽くす!』 鶴田 育子 - 心理カウンセラー(2013/05/01 11:29)
冬期うつも、いいではないですか。 傳川 紀子 - ヨガインストラクター(2013/02/24 23:07)