いろいろな会社を回っていると、人事制度上のいわゆる“評価制度”のことを、「評価」と呼ぶところ、「考課」と呼ぶところ、「査定」と呼ぶところの、大きく三つの呼び方に出会います。
実際に皆さんは、それほど意識して使い分けているわけではないと思います。多分、会社内で使ってきた用語が何となく定着して、そのまま使っているようなことが多いのではないでしょうか。
私も皆さんの意識とほとんど同じで、何となくニュアンスの違いは感じながら、相手の会社に合わせて使っていることが大半なのですが、実際に言葉が違うということは、何か意味が違うはずです。
辞書で調べてみると、こんな感じでした。
【評価】
1.品物の価格を決めること。また、その価格。ねぶみ。「―額」
2.事物や人物の、善悪・美醜などの価値を判断して決めること。「外見で人を―する」
3.ある事物や人物について、その意義・価値を認めること。「―できる内容」「仕事ぶりを―する」
4.「教育評価」の略。
【考課】
1.公務員・会社員などの勤務成績を調査して優劣を定めること。
2.銀行・会社などの営業成績を調査・報告すること。
3.律令制における官吏の勤務評定。
【査定】
金額・等級・合否などを調査したうえで決定すること。「税額を―する」「勤務態度を―する」
どうも、「評価」は広い意味でいろいろな物の価値判断をすること、「考課」は主に勤務成績上の“優劣”を決めること、「査定」は金額や合否など、もう少し白黒はっきり決めること、という感じがします。
私がなぜこんなことを思ったかというと、実は昔から「査定」という言葉に何となく違和感があり、何か一方的に決められるというか、問答無用というか、言葉自体にそんなニュアンスを感じていたからのように思います。実際には一方的にされたわけでも問答無用でもなかったのですが、言葉のイメージでそんな風に思っていたということです。
言葉や用語というのは意外に大切で、例えば「精神力」とか「気合い」とか言われると共感できないが、「メンタル」などと言われるとすんなり入ってくる、なんてことがあります。
私が人事制度づくりをお手伝いする時、制度の中に出て来る言葉や用語の表現には、非常に気を使います。一般的に定着している言葉、とらえ方に差が出ない言葉は良いのですが、そうでない物で言葉や用語の選択を誤ると、そもそもの意義を理解してもらえなかったり、制度定着が滞ったりします。
言葉や用語には、人それぞれのイメージや先入観があります。今回は人事制度上の例ですが、それ以外のこと、例えば経営理念、事業計画、方針説明、日々の作業指示など何をするにおいても、すべてのことで“言葉選び”はとても重要なのではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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