ここ最近の報道で、日本航空でのジャンボ機のラストフライトの話題を何度も見ました。
いろいろな人が特別な感慨を持つ場面なので当然なのかもしれませんが、乗務員も整備士も地上勤務の社員もツアーに参加している乗客も、本当に名残惜しそうに思い出を語っていました。そこからにじみ出て見えるのは、みんな日航という会社が好きでファンであるという感情のように思いました。
多くのファンがいるという事は、それだけ多くの喜びや楽しみややりがいや思い出を、会社という存在が周りに与えてきた証しだと思います。もちろんあまりよくない感情を持っている人もいると思いますが、仮に少数であっても、働いている人たちとその周辺にいるお客様にそう思ってくれる人たちがいるというのは、会社にとっては本当に幸せな事ですし、簡単には作り出せない財産です。また苦しい時ほどこういう人たちが力になってくれると思います。経営的に今は厳しい日航ですが、社内外のファンのためにもぜひ立ち直ってもらいたいと心から思います。
社員と会社の関係は、本当に千差万別です。愛社精神が目一杯旺盛な会社もありますし、働いている社員すら自社のファンでない会社もあります。私のように人事に関わる者として一番悲しいのは、この後者のような場合です。本来「協調関係」にあるべき会社と社員が、「緊張関係」にあったりします。“きょうちょう”と“きんちょう”は平仮名で書くと似ていますが、意味はやっぱり大きく違います。
そうなる理由はいろいろあると思いますし、お互い様のことも多いと思いますが、私が思うに、きっかけは会社側にある事が多いように感じます。会社と社員の関係作りの主体は、やはり会社側にあると思うからです。
例えば経営的に厳しくなり、社員にも負担を強いる施策を実施せざるを得なくなったとして、強く反発されたり理解を得られないという時は、それ以前の関係作りが十分でないことに原因があったりします。
「良かった時期は何もしなかったくせに、困ったらこれか!」などと言われたとすれば、「困ったときはお互い様」と社員が思える振る舞いをしてこなかったせいがあるでしょう。利益還元、処遇改善、設備投資などが適切でなかったと思われてしまっているのではないでしょうか。
今まで積極的に社内情報を見せてこなかったから「何か隠しているに違いない」と思っているのかもしれません。情報公開はしていても、それを理解できるだけの教育をしてこなかったせいかもしれません。いずれにしても、事の始まりは会社にあると言えるのではないでしょうか。
こんな両極端な例を考えながら、「会社のファン」を作る事の大切さを感じているところです。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
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