相続のトラブルを避ける。~元気なうちの「遺言」

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公開日時
2012/04/02 22:00

相続は家族の死を前提にするため、前もって話し合うのはためらわれるもの。相続時にはさまざまな費用や手続きが必要になります。あらかじめ手配や準備をしておかないと、あわてたり、遺産を巡って家族が争ったりすることにもなりかねません。

相続が発生すると直ちに、葬儀費用など一定の現金が必要となります。また、被相続人(亡くなった人)が自営業者や年金受給者だったなら、その年の1月1日から死亡した日までの所得税も相続人が納付しなければなりません。被相続人名義の預金口座は、遺産分割協議が調うまで原則として凍結されるため、こうした支払いに充てるための現金も、事前に用意して置く必要があります。年間110万円までの生前贈与の非課税枠を使って、相続直後に必要な資金を毎年少しずつ被相続人から相続人に渡していくのもひとつの方法です。

相続財産の把握も大切です。被相続人がどの銀行や証券会社などに口座を持っているかを生前に家族に伝えたり、所有する土地の境界を画定したりしておくと、後で相続人が混乱しないですみます。税理士に財産の評価を依頼し、相続税がかかるかどうかも確認しておくとよいでしょう。相続財産の課税価格が「5千万円+(1千万円×法定相続人の数)」に相当する額を超えなければかかりません。配偶者と子が2人ならば8千万円。

実際に被相続人のうち相続税が発生するのは全体の4%程度に過ぎませんが、家庭裁判所に寄せられる相続争いの7割以上は、遺産が5千万円以下のケースで起きているとのことです。「大した財産はないし、関係ない」と思っていると、思わぬ落とし穴があるかも。

被相続人の自宅など不動産を遺族らが共有で相続し、後からもめるというケースも増えています。共有での相続は一見平等のようですが、問題を先送りしているだけ。なるべく避けるべきです。その後、共有で相続した相続人が亡くなり、それぞれの配偶者や子どもがその不動産を共有で相続することになると、人間関係が疎遠になっているだけに状況も複雑さを増すことに。このようなケースでは、相続人のうち一人がその不動産を相続したうえで、他の相続人に金銭などを支払う「代償分割」といった方法を使うことも有効です。

被相続人の子どもの1人が介護などをしていた場合、その貢献度を相続時にどう盛り込むかということもトラブルの原因になります。民法は介護などで被相続人に貢献した相続人は、その貢献度に応じて法定相続分とは別に財産を「寄与分」としてもらえると定めていますが、問題なのは寄与分の計算方法が決まっておらず、寄与分が配偶者や血族などの法定相続人にしか認められていないということ。そのため、嫁が義理の父母らの介護をしても財産はもらえません。

こうした相続を巡るトラブルを防ぐ最善の方法は、遺言をきちんと残しておくことです。遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類あります。自筆証書遺言は、費用がほとんどかからずに作成できますが、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認手続きが必要で、財産の記載漏れなどがないように注意しなければなりません。公正証書遺言は証拠能力は高いのですが、作成時に2人以上の立会人が必要なほか、相続人が相続する金額に応じてかなりの費用がかかります。相続金額が1億円までの場合は、5万~6万円程度。

遺言を正確に実行するには、遺言執行者を指定しておくのがよいでしょう。遺言執行者は相続人もなれますがが、不動産や預金の名義変更などだけでも大変な手間がかかります。弁護士や信託銀行などの第三者に依頼するという方法も。

被相続人が財産分けについての考え方をきちんと示しておくことはとても大切です。遺言には、財産の分け方だけでなく、家族への感謝の気持ちなどを記した「付言事項」も忘れずに添えましょう。なぜこのような財産の分け方をしたか付言事項で説明しておけば、遺族も合意を形成しやすいものです。

このコラムの執筆専門家

(京都府 / 税理士)

税理士法人 洛 代表

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