●ライフサイクルについて
住みやすい家は、住まう人の生涯を通して、住みやすい家でなければなりません。
バリアフリーも大切ですが、老後が気になるからといって、若いうちからバリアフリーな家に住む必要はありません。トイレに介助者が必要になったり、浴室に手摺が必要になるのは、人生を終える前の数年の間の話しです。勿論健常者が明日突然身体障害者になる可能性もゼロではありませんが、バリアフリーに備えて低い可能性のために、心踊らない家に過ごす愚を警戒すべきです。
別な見方として、家族が住まう器と考える場合、家族構成そのものの変化に対応出来る家にする必要があります。また、ライフサイクルと同時にライフスタイルの変化にも対応させなければなりません。
例えば、二十代で家を建てた時は、新婚間もなく夫婦と客間(将来の子供部屋)があればそれで充分で、外観もカジュアルでポップな感じがお気に入りだったとします。
三十代になって子供が増え、それにしたがって存在感も増してきますと、たちどころに家の狭さが気になりだします。
四十代になれば、子供の数も嵩も落ち着き始めますが、自分の社会的地位の向上によって、家にステータスを求める様になり、カジュアルで気に入っていた家が安っぽく思えてしまいます。
五十代になり子供が独立し始めると、急に家の中が広々として来て、寒さに似た空しさを感じるようになります。
六十代になると、バリアフリーが気になりだし小さくても良いので、自分の趣味に合う家を求める様になります。
と云った具合に、家に対する要求は生涯において目まぐるしく変化します。
どの時代に照準を合わせて住むのがベストかを考えるのは間違いです。その時々全てが貴方の人生なのです。その時々全てにフィットする家を模索するのが懸命な家造りです。
費用を掛けず、人生のその時々を的確に彩る家を、【可変性能の良い家】と云います。
間取り構成を考える上で、自分の将来像を描きながら、それらに対応する事を想定することは、とても大切な事なのです。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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また、IAU型免震住宅設計資格取得者として、免震住宅等の相談も行っています。
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