建築条件付は、売主にとって好都合ですが、買主にとっては少なからずリスクを背負い込む結果となります。
売買契約は現状有姿が原則です。マンション等の様に出来上がったものを見て納得して建物を買うのが売買契約です。ですので見て気に入らなければ買わなければ良い、と云う事を前提にした契約です。
請負契約は、設計図書を契約書に綴じ込み、設計図書通りのものを建設することを請け負うと云う契約です。ですので契約する際には現物はありません。その為設計図書通りに出来ていなければやり直しの義務が請負者に発生します。
で建築条件付の建物の契約は本来、現物が出来上がっていないので請負契約となるのが本筋なのですが、建築条件付の土地で請負契約する売主さんは殆どいません。売買契約で済ませます。
では、現物が無いのに売買契約できるのか?と云う疑問が浮かびますが、抜け道があるのです。手付金と云う名目のお金を支払わせてその区画の優先交渉権を取得させて、建物が完成してから売買契約書を交わすのです。一般の分譲マンションも同じ形態を取っています。ただマンションの場合は現物に限りなく近いモデルルームがありますので、大きなトラブルにはならない(なり難い)のです。
区画数の少ない建築条件付の場合はモデルハウスを造る余裕がありません。ですので手付金を支払う買主さんは具体的なビジョンを描けずに建物を買ってしまう事になってしまいます。間取り図面や簡単な仕上げ表は事前に頂けるでしょうけど、詳細に渡って指定できる設計図書がある訳ではありません。工事が始まり出来たものが思いと違っていても、「当社仕様です」で済ませてしまいます。実際には契約出来ていない訳ですから、「嫌なら買うな」が成立しているのです。手付金は施主都合の解約と云う事で没収されてしまいます。
売主にも言い分がありまして、銀行から事業融資を受ける際に土地建物込みを条件に融資が受けられるのだそうです。本当は土地のみで売却した方が手離れも早く資金の回収がスムーズに行くのですが、それでは建物の融資が他行で決まってしまう事も予想され、銀行が土地のみで売却することを許してくれないのだそうです。
ですので、建築条件が外れないのであれば、土地を売買契約、建物を請負契約としてもらえるよう、粘り強く交渉する事をお勧めします。
このコラムの執筆専門家

- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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