(続き)・・並外れた抗酸化力をもつ果物として「ベリー類」があります。イチゴやブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリー、クランベリーなどが該当し、ポリフェノールやアントシアニン等のファイトケミカルが豊富に含まれています。酸化を強力に防ぐことによってβアミロイドの産生を抑制し、神経伝達をスムーズにして神経活動を活発にします。動物実験でも記憶力、平衡機能、運動技能の向上が認められています。
「ナッツ(木の実)類」も抗酸化力に優れた食材です。神経細胞の酸化を防ぎ、新しい神経細胞の誕生を促します。また既存の神経細胞の情報伝達力を高めます。例えばクルミやアーモンドの抽出エキスをラットに与えたところ、脳内でβアミロイドの凝集を阻止して分解を促進しました。ナッツは同時に血糖値やコレステロールを下げる作用もあり、毎日一つかみのナッツを食べることが推奨されています。
脳の健康のためには「魚」を食べることが大切です。特に青魚と呼ばれるサケ、ニシン、イワシ、サバ、サンマ、アジといった魚にはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が多量に含まれており、血液をサラサラにする効果の他、神経細胞を保護する役割を果たします。実際に世界的な研究で、魚を毎日食べる人は食べない人に比べ、認知症の発症率が4割も少ないという結果が出ています。
この魚類に含まれるEPAやDHAという油脂は「オメガ3脂肪」というグループに属します。これに対して大半の植物油脂はオメガ6脂肪に属します。現代人はオメガ6を過剰に摂取しており、これを抑制してオメガ3を摂るべきなのですが、決定的に不足しています。数少ない植物由来のオメガ3油脂としてはシソ油(エゴマ油)とアマニ油があり、アレルギーや動脈硬化を抑制する効果が証明されています。
日常的に入手しやすい油としては「オリーブ油」がお勧めです。これはオメガ3ではなくオレイン酸を含んでいますが、血液をサラサラにし、動脈硬化を抑制する作用が認められます。それだけでなく脳内でβアミロイドの産生を阻害し、認知症の発症そのものを防止する効果も証明されています。イタリアなど地中海地方の食生活が健康的といわれる理由の一つは、このオリーブ油を多用する習慣があるとされています。
炭水化物などの糖質は「全粒穀物」として摂取するのが健康的です。玄米や全粒粉パン、ライ麦パン、蕎麦、黒砂糖などがこれに該当します。胚芽ごと丸ごと摂取することによってビタミン類やミネラル類、食物繊維、ファイトケミカル類もしっかり摂ることができ、また血糖値の変化も緩やかになります。胚芽に含まれるGABAという成分は、神経機能を安定化させることが証明されています・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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