- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:事業再生と承継・M&A
3 債務の共同相続
(1)可分債務
債務は債権を裏から説明したものですから,可分債権と同様に考えられ,金銭債務のような可分債務については,各共同相続人の相続分に応じて分割して帰属することになります(大決昭和5・12・4民集9巻12号1118頁)。
(2)不可分債務
不動産引渡債務のような不可分債務については,共同相続人に不可分的に帰属することになりますから,各共同相続人はその全部につき履行の責任を負うことになります(大判昭和10・11・22裁判例9巻民288頁)
(3)連帯債務
連帯債務については,それが単純な金銭債務のような可分債務は,分割承継され,各自その承継した範囲において,本来の債務者と連帯して債務を負担することになります(最判昭和34・6・19民集13巻6号757頁)。
この点,連帯債務の担保的機能が損なわれるとして,これに反対する学説もありますが,各共同相続人が全額について連帯債務を承継するとなると,相続人の数だけ連帯債務者が増えることになり,連帯債務の担保的機能が過度に強化されることになってしまいます。元の連帯債務者(被相続人)の財産の範囲で担保されていれば債権者の保護としては十分であり,判例の解釈は妥当であるといえます(内田貴『民法Ⅳ補訂版』408頁)。
【事例】において被相続人甲が1000万円の連帯債務を負っていた場合には,妻乙に500万円,長男丙と次男丁に250万円ずつ分割承継され,その限度で連帯債務者となります。
ただし,相続分の指定がなされた場合の相続債務の承継については【コラム】続分の指定と相続債務で前述したとおりです。
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