- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:事業再生と承継・M&A
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 村田 英幸
- (弁護士)
【コラム】 相続分の指定と特定・包括遺贈の対抗要件の要否
(ⅰ)相続分の指定の対抗要件の要否 最高裁は,法定相続分を下回る相続分の指定を受けた場合,その相続人 は,指定相続分しか取得しておらず,これを上回る部分については実質的 無権利者であるから,その相続人が法定相続分割合を第三者に譲渡して も,第三者は指定相続分を上回る部分については,権利を取得することが できないとしています(最判平成5・7・19家裁月報46巻5号23頁)。 すなわち,法定相続分と同じく(最判昭和38・2・22民集17巻1号235 頁),指定相続分についても,共同相続人は登記なくして,第三者に対抗することができると解されています。 (ⅱ)特定遺贈の対抗要件の要否 これに対して,特定遺贈に関して,遺贈を受けた相続人は,他の共同 相続人の債権者に登記なくして,その所有権取得を対抗できないとされています(最判昭和39・3・6民集18巻3号437頁)。 (ⅲ)包括遺贈の対抗要件の要否 包括遺贈に関しては,未だ最高裁判決はありませんが,下級審裁判例に は登記を必要とするものがみられます(東京高判昭和34・10・27高裁民集12巻9号421頁)。 包括遺贈について,第三者に対する対抗要件を必要と考えた場合,相 続人に対する包括遺贈が相続分の指定と解釈されるところ,指定相続分について第三者に対する対抗要件が不要とされている(前掲最判平成5・7・19)ことと矛盾が生じてしまいます。 (ⅴ)判例に反対する有力説 この点,相続人の範囲は原則として戸籍で公示されており,第三者は 法定相続分を計算することができますから,法定相続分については第三 者の取引の安全が害されることはないといえますが,これと異なる相続 分の指定については第三者の取引の安全が害されます。そこで,包括遺 贈と同じように考え,指定相続分は登記なくして第三者に対抗できない と考える学説も有力です(内田貴『民法Ⅳ補訂版』503頁。中川=泉『相 続法第4版』258頁も「相続分指定を登記なしに対抗できるとしてよい かは問題である」と記述されています)。 |
このコラムに類似したコラム
事業承継と遺留分減殺請求権行使の効果 村田 英幸 - 弁護士(2012/01/22 16:40)
自社株の相続税・贈与税がゼロになる!? 事業継続が困難な場合とは 大黒たかのり - 税理士(2018/05/14 15:05)
自社株の相続税・贈与税がゼロになる!? 贈与者と受贈者の要件 大黒たかのり - 税理士(2018/05/02 14:35)
自社株の相続税・贈与税がゼロになる!? その3 大黒たかのり - 税理士(2018/03/28 11:23)
自社株の相続税・贈与税がゼロになる!? その2 大黒たかのり - 税理士(2018/03/27 10:10)