事業承継と中小企業承継円滑化法(株式等以外の財産) - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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事業承継と中小企業承継円滑化法(株式等以外の財産)

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相続

4 株式等以外の財産に関する遺留分の算定に係る合意等

(1)除外合意・固定合意との関係

 除外合意と固定合意は,二者択一の関係にあるわけではありません。すなわち,後継者が旧代表者から受けた株式等のうち,一部について除外合意の対象としつつ,残りの株式等について固定合意の対象とすることが可能です。

そして,株式等の除外合意・固定合意の双方又はいずれか一方の合意をすることにより,事業用資産等の除外合意(中小企業承継円滑化法5条),推定相続人間の衡平を図るための措置に関する定め(中小企業承継円滑化法6条1項),非後継者が贈与を受けた財産についての除外合意(中小企業承継円滑化法6条2項)をすることが可能になります。


 

(2)事業用資産等の除外合意

 旧代表者の推定相続人は,除外合意や固定合意をする際に,併せて,その全員の合意をもって,書面により,後継者が当該旧代表者からの贈与又は当該贈与を受けた旧代表者の推定相続人からの相続,遺贈若しくは贈与により取得した財産(当該特例中小企業者の株式等を除く。)の全部又は一部について,その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しない旨の定めをすることができます(中小企業承継円滑化法5条)。

 株式等に限らず,事業の用に供している不動産や現金なども後継者に確保させることが円滑な事業承継の実現には不可欠です。そこで,後継者が取得した株式等以外の財産で事業活動を継続するために必要な資産についても,遺留分算定の基礎財産に算入しないこととすることが認められます。

なお,事業用資産等の固定合意は認められていません。これは,株式等と違って,事業用資産は,後継者の経営努力により合意後に目的物の評価額が向上することは考えにくいためです。

(4)推定相続人間の衡平を図るための措置に関する定め

 旧代表者の推定相続人が,除外合意や固定合意をする際に,併せて,その全員の合意をもって,当該推定相続人間の衡平を図るための措置に関する定めをすることができ,この場合においては,当該定めは,書面によってしなければなりません(中小企業承継円滑化法6条1項)。

 株式等の除外合意(法4条1項1号),固定合意(法4条1項2号),事業用資産等の除外合意(法5条)は,すべて推定相続人全員の合意が必要になるわけですが,後継者にとって有利なものである以上,後継者以外の推定相続人の合意を得ることが困難となることが予想されます。そこで,後継者以外の推定相続人の利益を考慮し,推定相続人間の衡平を図り,事業承継の合意をしやすくするため代償措置を定めることが認められます。

 例えば,(ⅰ)後継者が後継者以外の者に対して一定額の金銭を支払う旨の合意をすること,(ⅱ)後継者が旧代表者に疾病が生じた場合には医療費を負担する旨の合意をすること,(ⅲ)後継者が旧代表者の生活費を負担する旨の合意をすることが想定されます。

(3)非後継者が贈与を受けた財産についての除外合意

 旧代表者の推定相続人は,推定相続人間の衡平を図るための措置に関する定めとして,後継者以外の推定相続人が当該旧代表者からの贈与又は当該贈与を受けた旧代表者の推定相続人からの相続,遺贈若しくは贈与により取得した財産の全部又は一部について,その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しない旨の定めをすることができます(中小企業承継円滑化法6条2項)。

 なお,本条の規定による合意の対象とすることができる財産の種類や額に制限はありませんが,固定合意は認められていません。

 

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