- 塚本 有紀
- フランス料理・製菓教室「アトリエ・イグレック」 主宰
- 大阪府
- 料理講師
対象:料理・クッキング
- 黄 惠子
- (料理講師)
カスレが重たかったでしょうから、デザートの前に果物をお出しします。そのまま出したのではつまらないので、テリーヌに。ミントのジュレでつないでいます。
亜麻仁を散らしたラングドシャを添えて。
本当のデザートはサヴァランsavarin
私の勝手な好みで申し訳ないことですが、生地にはラムに浸けたレーズンを入れています。
サヴァランの名前の由来はこんな風です。
1740年頃ポーランド王スタニラス・レクチンスキー王がロレーヌ公となってナンシーの宮殿にいたときのこと。ぱさっとしたクグロフにラムをふりかけてフランベすることがはやり、ロレーヌの宮殿でもてはやされました。レクチンスキー王は愛読していた「千夜一夜物語」の登場人物の名前からアリババと命名。いつしかこれが短くなって「ババbaba」になったとも言われています。(今はこれを「ババ・オ・ロムbaba au rhum」、ラム風味のババと呼びます)
レクチンスキー王の娘マリー・レクチンスキーがルイ15世に嫁ぎ、お菓子職人ストレー(ロレーヌ生まれ)がお抱え菓子職人としてベルサイユ宮殿へ。その後ニコラ・ストレーはパリ・モントルグイユ通りにお店を開きます。
「ストレーStohrer」は今もパリの同じ場所、51, rue de Montorgueilにあります。
スペシャリテはもちろんババ。ぜひ買いに行ってみてください(甘いけど)。店内はクラシックで、素敵です。
さてこのババを、1845年、当時の有名なパティシエのジュリアン兄弟(今ならさしずめカリスマシェフでしょうか)が、レーズンを使わない生地をリング型に焼き、生クリームで飾ったお菓子を考案。美食家で有名なブリア・サヴァランにちなんで、「サヴァランsavarin」と名付けたのだそうです。
私は、勝手ながらレーズン入りの生地で、かつサヴァラン型のほうが好きです。というわけで、変則的にレーズンを入れたサヴァランをお出ししています。
びちょびちょにシロップを吸わせ、ラムをこれでもかこれでもかとうちます。そしてこれをおいしくいただくためには、しっかり冷たい状態であるべきです。
だからパティスリーで買うより、本当はレストランで食べるのがおいしいと思います。
これまで食べたサヴァランでもっともおいしかったのは、リヨン近郊の「ポール・ボキューズPaul Bocuse」でのこと。料理は相当にしっかりと重ためのクラシックですが、サヴァランは香りもバランスも非常によくて、あっさり軽め(に思っただけ。サヴァランの内部にしっかりとシロップをキープさせるため、シロップには一定の糖度が必要とされます)。すばらしくおいしいものでした。
「びっくりした・・・」
がその感想です。
ただしサヴァランは通常かなり甘いのも事実。
「日本人でこのお菓子を好きな人なんて、いないんじゃないの」という悪口を聞いたことがありますが、
「そうかな。けっこうおいしいけど」
と私は思っています。でも教室ではやはり
「甘いですよ!」
と前置きしてからお出しします。しかし今回は
「えぇ? 大好きですけど・・」
とおっしゃる方も意外に多くて、驚きました。強者多し!
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