- 村田 英幸
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対象:事業再生と承継・M&A
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10 遺留分減殺請求権行使の効果
遺留分減殺請求権の法的性質は,形成権であって,その効果は直ちに物権的に生じます(最判昭和35・7・19民集14巻9号1779頁,最判昭和41・7・14民集20巻6号1183頁,最判昭和51・8・30民集30巻7号768頁)。すなわち,遺留分減殺請求権の行使により,遺贈又は贈与の目的物に対する物権的権利が当然に遺留分減殺請求権を行使した相続人に帰属し,未履行の遺贈又は贈与については履行拒絶権が,既履行の遺贈又は贈与については返還請求権が発生します。取り戻した財産は遺留分減殺請求権者と受遺者または受贈者との共有となり,この共有状態を解消するためには民法906条以下の遺産分割手続ではなく,民法256条以下の共有物分割手続によることになります。このことは,減殺請求の対象が包括遺贈であっても異なりません(最判平成8・1・26民集50巻1号132頁)。
ただし,遺留分減殺請求権の行使の効果が物権的に生じるといっても所有権移転登記手続請求訴訟のように意思表示を命ずる判決の場合には,当該判決が確定しないと登記申請することはできません(民事執行法174条,不動産登記法63条)。
遺贈又は贈与の目的物の価額が侵害された遺留分を超える場合があります。その場合には,遺贈又は贈与のすべてを減殺して差額を返還するか,受遺者又は受贈者は,減殺を受けるべき価額を弁償して,目的物の返還請求を免れることができます(民法1041条)。
なお,遺留分減殺請求権の行使を受けるべき相続人が,贈与の目的物を他に処分していた場合には,受贈者は価額弁償をすることになります(民法1040条)なお,民法1040条は遺贈についても類推適用され(前掲最判昭和57・3・4民集36巻3号241頁),受遺者も価額弁償をすることができます。
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