- 村田 英幸
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対象:事業再生と承継・M&A
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第8 遺贈
1 遺贈の自由とその制限
遺贈とは,遺言によって自らの財産を無償で他人に与えることをいいます。遺言により行われるものですから,単独行為であり,贈与契約とは異なります。遺贈は,生前に自由に処分できた自己の財産を,遺言という方式で処分するもので,遺留分の規定に反することができないとされます(民法964条)。遺言には撤回の自由が保障されているため(民法1022条,1026条),遺言者はいつでも遺贈を自由に撤回することができます。また,遺贈の目的物を贈与するなど,遺言内容と抵触する生前処分がなされた場合には,遺言は撤回されたものとみなされるため(民法1023条2項),遺贈も撤回されることになります。
遺贈は,遺産分割方法の指定と非常によく似た機能を果たすことから,この区別が問題となることがあります。
2 特定遺贈と包括遺贈
(1)定義
特定遺贈とは,遺贈の対象が特定の財産である場合や種類によって指定されている場合をいいます。包括遺贈とは,遺贈の対象が遺産の全部または一定割合で示される場合をいいます。例えば,「遺産の三分の一を与える」と遺言に書くことです。
遺贈を履行する義務がある者を遺贈義務者と呼びます。通常は,相続人がこの立場につきますが,遺言執行者があるときは,相続人に代わって遺贈義務者となります(民法1015条,1012条)。
(2)遺贈の登記手続
遺贈の登記手続は,特定遺贈,包括遺贈のいずれについても,受遺者と遺贈義務者との共同申請(不動産登記法60条)によるべきものとされ(東京高決昭和44・9・8判時572号38頁),相続人または遺言執行者は,受遺者と共同して,「遺贈」を登記原因とする所有権移転登記申請をしなければなりません。相続人と受遺者は利害が対立することも多いため,遺贈による権利移転を円滑に行うには遺言執行者の指定が望ましいといえます。
(3)遺贈の放棄
特定遺贈の場合,受遺者は,遺言者の死亡後,いつでも,遺贈の放棄をすることができます(民法986条1項)が,包括遺贈の場合,受遺者は,相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)ことになり,遺贈を放棄したい場合には,自己のために遺贈があったことを知った時から3か月以内に放棄しなければなりません(民法915条1項)。
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