(続き)・・そのように諸外国はもとより、日本でも禁煙の動きは大なり小なり進展しており、その流れは今後いよいよ加速することが予想されます。タバコに対する風当たりはますます厳しさを増し、タバコをますます吸いにくい世の中になることは確実な情勢です。それではタバコを吸う方々はなぜ、今すぐタバコを止めない、あるいは止められないのでしょうか。それを検討する前に、タバコの健康に及ぼす様々な影響について考えてみましょう。
タバコの煙には4000種類以上もの化学物質が含まれていますが、現在知られているだけでも200種類以上の有害物質と50種類以上の発ガン物質を含んでいます。肺ガンの原因として恐れられる「タール」は様々な有害物質の集合体です。これらの有害物質を全て挙げていたらキリがありません。代表的なものだけを挙げても、ニコチン、アンモニア、メタノール、トルエン、アセトン、シアン化水素、ナフタリン、ダイオキシン、カドミウム、ヒ素、フェノール、クレゾール、一酸化炭素・・と続きます。
これらの物質名を聞いただけでも気分が悪くなってしまいそうですが、これらの物質を吸引すると、人体にはどのような影響が現れるのでしょうか。タバコに含まれる有害物質による影響には大きい個人差がありますが、少なくとも長年の喫煙者には、これら有害物質の悪影響は直ちには現れないかのように感じられます。もしタバコを吸って直ちに重大な影響が現れるようならば、さすがのヘビースモーカーもタバコなど吸っていられません。
タバコが本当に怖いのは、吸い続けることによって様々な健康上の悪影響が波状的に、そして遅かれ早かれ確実に現れることです。取りあえず大きな問題がないと考えて数か月から数年、そして数十年も吸い続けることによって、全身の臓器や血管、神経その他の組織に重大な影響がしのび寄り、気が付いたときには計り知れない障害や疾病が生じることが避けられないのです。それでは具体的に、どのような病気や障害に見舞われてしまうのでしょうか。
一番よく知られている病気として肺ガンが挙げられます。「タバコを吸うと肺ガンになる」という話は30年以上も前からよく言われていましたが、それを最初に科学的に明らかにしたのはイギリスの医師による研究でした。欧米の多くの国では長年、肺ガンによる死亡がガンのトップでしたが、日本でも男女ともに肺ガンが急増し、約20年前に男性ではそれまでトップだった胃ガンを抜いて、初めて肺ガンによる死亡が1位となりました。肺ガンの約85%はタバコと関係しているとされています。
同じ肺ガンのうちでも、従来から喫煙との関係が注目されていた中心部肺ガン(主として扁平上皮癌)よりも、喫煙との関係がはっきりしなかった肺野部肺ガン(主として腺癌)が女性を中心に増えています。これは食生活の変化なども関係していますが、最近の研究でタバコとの関係性が確実視されるようになり、しかも低ニコチン、低タールのタバコとの関連が深いとされています。この一件だけをみても、低ニコチンの軽いタバコが比較的安全だ、などとは決して言えないのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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