(続き)・・肺気腫は、肺の中で酸素と二酸化炭素を交換する場である肺胞とよばれる組織が破壊され、肺が縮んで空気を排出する力が衰えてしまう病気です。進行すると肺胞同士が融合し、ブラと呼ばれるガス交換機能のない無駄な空間が生まれます。そのために呼吸、特に呼気が障害されて非常に息苦しくなります。肺気腫患者の85~90%はタバコが原因とされ、慢性気管支炎と同様に喫煙を続けると確実に病状は進行します。
その他にもタバコが原因で、発症や悪化が促進される病気は数多くあります。タバコは胃粘膜の血流を阻害し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発症を増加させます。ストレスを発散させる目的でタバコを吸っても、かえって胃粘膜にはストレスとなってしまうのです。一方でタバコの煙は歯肉や歯根膜、歯槽骨などに悪影響をもたらし、歯周病の発症を促進する要因となります。歯周病が進行すると歯を失い、つらい入れ歯生活が待っていますが、喫煙習慣はそれを加速してしまうのです。
さらにタバコは美容の敵でもあります。ニコチンを含む有害物質は皮膚組織を酸化させてビタミンCを破壊し、シワやシミ、タルミなどの原因となります。また喫煙者の肌にはツヤや張り、生気がなく、10歳も20歳も年取ったように見えてしまうのです。これは女性にとって何より避けたい事のはずです。一方の男性にとって深刻な問題にED(勃起不全)があります。これはタバコによる動脈硬化が陰茎にまで及び、血流障害から充分な勃起が得られなくなるのです。これは男性にとって自信と自尊心、喜びを失う一大事です。
以上のような一連のタバコの害は、喫煙者本人の問題だけではありません。最近の禁煙空間の拡大によってタバコを吸える場所が限られてきているのは、何も喫煙者を社会から締め出したいためではなく、タバコの出す煙がタバコを吸わない人に対しても健康上の悪影響を及ぼすことが確実視されるようになってきたからです。これがいわゆる「受動喫煙」の問題で、タバコは単に喫煙者個人だけの問題ではないのです。
受動喫煙とは、自分自身はタバコを吸わないのに、他人のタバコの煙に日常的にさらされ、その煙を半ば強制的に吸わされることで、強制喫煙、間接喫煙ともいわれます。タバコの煙には、喫煙者が吸い口から直接吸い込む「主流煙」と、火のついたタバコの先端から立ち上る「副流煙」の2種類がありますが、この2つの煙の性質には大きな違いがあります。
主流煙の燃焼温度は860~900℃もあるのに対して副流煙の温度は500~650℃と比較的低く、いわば不完全燃焼したような状態のため、各種の有害物質の濃度が副流煙ではむしろ高くなっています。副流煙は主流煙に比べ、アンモニアを約46倍、タールを3.4倍、カドミウムを3.6倍、ニトロソアミンを52倍、一酸化炭素を4.7倍も多く含んでいます・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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