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遺産分割の4つの方法~その3・「換価分割」と「代償分割」~

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相続税・贈与税の基礎知識

前回に引き続き、遺産分割の4つの方法についてのお話です。

今回は、残り2つの分割方法「換価分割」と「代償分割」についてご説明したいと思います。

 

<換価分割>

「換価分割」とは、現金以外の遺産の一部もしくは全部を「まずお金に換えてから分けよう」という分割方法です。独居していた親が亡くなり、もう誰も住まなくなった居住用財産がある場合などにはお勧めの分割方法です。現金に換価して分け合うので、相続人間の不公平感は比較的少ない分割方法です。

ただし、売却する場合には、その売却益に対して「譲渡所得税」が課せられますし、売却手数料等もかかるので、財産が目減りしてしまうのは否めません。

相続税を支払う場合には「取得費加算の特例」が適用できますので、支払った相続税分も取得費の一部として売却益から差し引くことが可能です。

「換価分割」をする際には、いくつか注意点があります。

まず、相続税申告に「小規模宅地等の特例」を利用したい場合には、申告期限の10ヶ月を過ぎるまで当該不動産の売却はできなくなります。

また、長男が当該不動産にて事業や農業を行っている場合には、そこでの事業の継続が不可能となります。

次に、譲渡所得税の問題です。例えば、親が亡くなって親と当該不動産に同居していた長男と、別居していた次男が「換価分割」を行うとします。それぞれの持ち分を2分の1ずつとして、その物件が3,000万円で売却できたとすると、それぞれが手にするのは1,500万円ですが、当該不動産に同居していた長男には3,000万円までの「居住用財産の特別控除」枠があるため「非課税」、いくら生まれ育った家であっても、すでに別に居住を構えている次男には最大20%の譲渡税がかけられるのです。

後者2つのケースにおいて、有効な選択肢となり得るのが「代償分割」です。

 

<代償分割(代物分割)>

「代償分割」とは、相続人のうち誰かひとりが遺産の全部もしくは大部分を相続し、他の相続人には「代償金」や別の財産等を与える方法で、長男が当該不動産にて親の事業・農業等を引き継ぐ際に有効な分割方法です。

上記の譲渡所得税の問題も、不動産を「居住用財産の特別控除」が利用できる長男が取得し、売却した代金から、事前に話し合い遺産分割協議書に記載しておいた金額の代償金を支払うことで、より納得感のある分割が可能となります。ただし、税務署が換価分割と認定するリスクがありますので、あらかじめ専門家に相談した上で実行することをおすすめします。

しかし、事業を継ぐ相続人に「代償金」を支払う余力があるかどうかがポイントになってきます。

また、現金で「代償金」を支払う代わりに土地などを与えた場合(「代物分割」を行った場合)には、譲渡所得税が課せられるので注意が必要です。

 

以上、4つの分割方法それぞれにメリット・デメリットがあり、相続人ごとの財産状況、家族関係、居住環境等さまざまな要因によって、どの分割方法を選択するのが賢明なのか、またはどの方法と方法を組み合わせることでデメリットを軽減できるのかの調整が必要となって来ます。

多くの方が一生に一度か二度しか経験しない相続です。「分けやすいから…」、「簡単だから…」と適当に選択してしまうと、後々思わぬ税金が課せられたり、財産を大きく目減りさせてしまう可能性が高い「遺産分割」ですから、信頼できる専門家に相談しつつ、それぞれにかかるコストやデメリットをきちんと把握し、慎重に選択するようにしましょう

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