前回のコラムで、遺産分割には4つの方法があることと、その簡単な概要についてお話しました。
今回は、そのうちの2つの分割方法「現物分割」と「共有分割」について、少し掘り下げてご説明したいと思います。
<現物分割>
前回のコラムの復習になりますが、「現物分割」とは「土地」は長男に、「預貯金」は母親に、有価証券は次男に…というように、特定の財産を特定の相続人に分ける方法です。
所有者(所有権の移動)がとても明確となりますが、財産ごとにその貨幣価値(価額)がバラバラなため、どうしても相続人間に不公平感が出てしまうのは否めません。
不動産(土地)を複数の相続人で分ける場合には、「分筆」という方法で、一筆の土地を、一筆、二筆、三筆と分けてから相続することになりますが、あまりに狭い土地をたくさんに分筆してしまうと、後々、家屋を建てることも、駐車場にすることもできないといった有効活用のできない土地になりかねないので注意が必要です。また、相続税を納めなくてはならない相続人は、土地を分筆することで「広大地の評価」の適用外となり、逆に高い評価額にて算出される場合もあります。
また、広い土地であっても、「分筆」の仕方によっては、片方の土地が「無道路地」になってしまったり、それぞれの土地が面する道路の幅員によっても建物を建てられる条件が異なったり、路線価の違いによって評価額に大きな差が出て、やはり公平に分割することはとても困難です。
<共有分割>
「共有分割」とは、相続した不動産等を共同で所有する方法です。
「共有」ということなら相続人の合意形成を図ることも容易でしょうが、特別な事情がない限り、不動産の共有はお勧めしません。
所有者が明確でないと、不動産を売却する場合など、名義人全員の同意を得ることが必要となりますが、その「名義人全員の同意を得る」という作業が、意外に大変なことなのです。
前々回のコラム「『相続』が『争族』にならないために」でも書きましたが、「モメる程の財産ではないから」、「うちは相続人同士の仲がいいから」といった理由で安易に選択することは避けるべきです。
不動産等を共同名義のままにしておくことは、いくら自分達の兄弟姉妹仲が良くても、次の世代の「相続」まで考えると権利者が雪だるま式に増えていくことになり、のちの「トラブルの種」を増やしていくことになりますから「その場しのぎの解決法」と言わざるを得ません。
ただし例外的に、いずれ売却する予定の自宅を、そこに同居する母親と息子で相続する場合などには、「居住用財産の特別控除」(租税特別措置法第35条)の枠が2人分(6,000万円)まで広がるので、節税対策にとても有効な分割方法となります。
では、なるべく相続人間の不公平感を軽減する分割方法はないのでしょうか?
次回のコラムでは、残る2つの分割方法、「換価分割」と「代償分割」について、詳しくお話したいと思います。
このコラムの執筆専門家
- 高原 誠
- (東京都 / 税理士)
- フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定 税理士
不動産鑑定士と協働。不動産に強い相続専門の税理士です。
フジ相続税理士法人は、名前の通り「相続」に特化した専門事務所です。税理士だけでなく、不動産鑑定士・司法書士による相続・不動産問題の独立系コンサルティンググループですので、相続・不動産全般のお悩みに対応しています。どうぞお気軽にご相談下さい。
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