(続き)・・つまり免疫システムがTh2主体のまま成長するため、何かにつけてTh2主体の免疫反応が顔を出す結果となります。すなわち花粉やダニ、化学物質の侵入はもとより、細菌やウイルスの侵入といったTh1が働くべき事態に於いても、Th2主体のアレルギー的免疫反応が発生し、長引く鼻水やくしゃみ、ぜんそく、アトピーといった症状に苛まれる傾向になります。実際に、清潔な環境にある先進国の小児は発展途上国の小児に比べ、アトピーやぜんそく、花粉症などの症状の発生率が高いと報告されています。
さらに「寄生虫」がアレルギーを抑制するという報告も多数あります。数十年前の日本には回虫や線虫はごく普通に存在した寄生虫ですが、これらの寄生虫の保有率が低下すると、アレルギーの有病率が優位に上昇するというのです。つまり細菌や寄生虫の存在が「通常の」Th1を主体とする免疫システムを訓練・強化し、結果的にアレルギー疾患を引き起こしかねないTh2主体の「アレルギー系」免疫システムを抑制しているという構図が見えてきます。
過度に清潔にすることは皮肉なことに、アレルギー性の諸疾患を増加させる結果を招いているようです。従ってアレルギー性疾患の蔓延を防ぐ手段の一つは、過度に清潔を重視したライフスタイルを改め、多少は細菌やウイルスを含んだ「自然な」環境を受け入れる、ということにありそうです。子供の遊びにしても昔は野原や公園で砂だらけ、泥だらけになって遊び、鼻をたらして帰宅したものです。そのように日常的な細菌やウイルスへの暴露によって、Th1系の免疫システムが鍛えられていたのです。
それに対して現代の子供は、学校が終わったら直ぐに塾へ直行し、帰宅後も休日も室内でテレビゲームやパソコン、携帯電話などに興じます。泥だらけや砂だらけになる機会は殆んどなく、もしなったとしても母親や教師にひどく怒られるので、うかうか外遊びもできません。きわめて清潔で一見快適な環境に暮らしているように見えますが、結果的にアトピーなどのアレルギー疾患の蔓延に繋がっている可能性が高いのです。従って、「快適さ」ということに関して考え直す時期に来ていると思われます。
それでは現代の生活環境に於いて、アレルギー疾患から少しでも我が身を守るために我々は一体どのようなことをすれば良いのでしょうか。いくら自然な環境が好ましいといっても、まさか泥だらけ、砂だらけの環境に住んだり、細菌や寄生虫を好んで口にするなどという訳にもいきません。我々現代人は清潔で快適な環境に慣れてしまい、清潔で美味しい食べ物を日常的に口にするようになりました。そのようなライフスタイルを基本的には維持しながら、アレルギー疾患を予防することは不可能なのでしょうか。
一つの解決方法として、「腸内細菌」の積極的な活用があります。乳酸菌やビフィズス菌など、腸内の善玉菌を日常的に体内に取り入れることで、アレルギー疾患の発症が有意に減少したという研究結果が出ています。具体的には、ヨーグルトや漬け物、キムチ、納豆などの発酵食品を毎日のように摂取するのです。これらの発酵食品には、がんや細菌を攻撃するTh1の細胞を増加させ、逆にアレルギーを引き起こすTh2の細胞を減少させる成分が豊富に含まれていることが証明されています・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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