その時は「一度人を雇うと簡単にクビに出来ないから、一時的に仕事が増えたぐらいでは会社は新しく雇いたくないんだよ」とか、「一人を長時間働かせた方が、その仕事を何人かで分け合うより人件費が安上がりになるんだよ」とか、いろんな説明をしましたが、娘は理屈ではわかってもあまりしっくり捉えられなかったようです。説明している私の方もしっくりきていないので、当然かもしれません。
仕事に就いている人、またその中でも能力がある人に仕事が集中し、その逆の人は仕事に就くことすらできなくなってしまう、これも最近よく言われる一種の格差でしょう。以前も同じようなニュアンスのことを書いたと思いますが、市場原理や自由競争に過度に依存しすぎると、勝ち組は勝ち続け、負け組は負け続けてどんどん格差が広がってしまいます。今は少し行き過ぎた状況なのだと思います。今後しばらくは揺り戻しがあってバランスを取っていく方向になるのでしょうが、どの程度が適切なのかというのは、なかなか難しいところです。
私が今までの経験上で思うのは、勝ち組の話ばかり聞いているとバランスを見失う危険が高いということです。会社の中での勝ち組といえば、業績を上げている部門長、営業マンといった人たちになるのでしょうが、ともすればそこから出てくる意見や要望ばかりが取り上げられがちになることがあります。「結果を出している」という事を後ろ盾に発言権が強くなり、周りもなかなか反論しづらくなりますが、その時点の結果に目を奪われ過ぎると、背景にある様々な無理や不条理に気づくことが出来ず、後になってから「判断を誤った」という事が起こって来ます。本当の意味でバランスが取れた適切な判断をしようとすれば、勝ち組だけでなく負け組と言われる人たちに話も聞き、結果だけでなくプロセスにも目を向けることが必要だと思います。
「バランス」という言葉はあいまいで、何を持ってよしとするかは難しいですが、その時々で「バランス」を見極めようとする努力だけは、常に続けていく必要があると思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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