日経記事;『「慎重すぎた」トヨタ EV戦略、急転回の真意 EV急加速(1)』に関する考察 - 新規事業・事業拡大全般 - 専門家プロファイル

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日経記事;『「慎重すぎた」トヨタ EV戦略、急転回の真意 EV急加速(1)』に関する考察

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皆様、

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

2月7日付の日経新聞に、『「慎重すぎた」トヨタ EV戦略、急転回の真意 EV急加速(1)』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『「私たちの思いがまったく通じない世界があることも思い知らされました」。1月7日の年初のあいさつで、愛知県豊田市の本社に集う従業員約500人を前に、トヨタ自動車社長の豊田章男はこう語り始めた。豊田が「通じない世界」を痛感したきっかけは2021年5月12日。30年に電気自動車(EV)200万台を販売する方針を発表したが、燃料電池車(FCV)を含んだ目標を、世間は評価しなかった。「トヨタ社長はEV反対派だとイメージ操作されている」。それ以降、豊田は不満を口にするようになった。。。』

 

トヨタがEVの開発・実用化に対して積極的でないとの印象は、最近まで市場で持たれていたのは確かです。

 

それは、トヨタが自分の言葉として、EVを明確に自社の次世代環境対応車として、明示化してこなかったことによります。

 

トヨタは、言うまでもなく、世界最大の自動車メーカーです。現在の自動車の主力車は、HVやPHVを含むガソリンエンジン車です。トヨタの経営トップは、前政権の首相に対して、ガソリンエンジン車が急激にEVにシフトすると、国内経済を支える既存の自動車産業が大打撃を受けると説明しています。

 

EVの性能は、電池の性能に左右されます。自動車用電池の開発は、現在急速に進んでいますが、すべての気象条件において、現在のガソリンエンジン車と同等な性能をもつ、EVは現時点では存在しません。

 

トヨタがHVやPHVを主力自動車として販売しているのは、現時点で最適な環境対応車ですとの、メッセージを市場に出していたと考えます。

 

ちなみに、私個人は、HVを2世代続いて使っており、その性能にとても満足しています。

 

しかし、EUや中国は、次世代環境対応車としてEVを全面的に打ち出してきました。両政府は、EV化を推し進めて、EVを核とした自動車産業の育成を進めています。

 

EVの開発・実用化には、しょうしょう極論を言いますと、ガソリンエンジン車のノウハウを活用する必要がありません。

 

EV化を推し進めれば、ガソリンエンジン車で築けなかった自動車産業を国内経済の柱の一つとして、位置付けられることによります。

 

また、EVはガソリンエンジン車に比べて、簡単な構造であるため、より短時間で事業化できるメリットがあります。

 

EV化を進める大義名分は、自動車が出す二酸化炭素の排出抑制にあります。二酸化炭素の排出抑制車としての次世代環境対応車の選択肢としては、水素燃料電池車があります。

 

トヨタは、次世代環境対応車として、水素燃料電池車の普及を推し進めています。水素燃料電池車を普及させるには、水素ステーションの設置数の増加と、販売価格の低価格化が必要になります。

 

一般的に水素ステーションの設置費用は、5~6億円かかると言われています。水素燃料電池車の販売価格は、量産効果が出てくれば低価格化が進むとみています。

 

しかし、水素ステーションの設置費用が高いことが、水素燃料電池車の普及にへの大きな障害になります。

 

一方、EV充電スタンドの設置費用は、高くても数十万円ですみますので、一般家庭でも設置可能です

 

トヨタは、事業性の視点から水素燃料電池車を世界市場で販売する必要があります。現時点では、水素ステーションが世界中で普及することは、現実的ではありません。

 

テスラモーターズの創業者は、トヨタが次世代環境対応車として水素燃料電池車をあげた時に、真っ向から反対しました。現実的には、次世代環境対応車はEVであると言い切っていました。

 

現在の状況では、EUや中国政府の方針もあって、EVが次世代環境対応車として市場で足場を固めつつあります。

 

トヨタのHVであるヤスリは、現時点で燃費性能が世界1位になっています。このようにHVは、高度な燃費性能を示していても、環境対応車として大きな関心をもたれていないのが実情です。

 

トヨタは、今までEVに対して積極的に情報発信を行ってきませんでした。この一因は、自社のHVやPHVがもつ実績と、次世代環境対応車の本命は、水素燃料電池車を推してきたことによります。

 

しかし、EUと中国、および当該地域内の自動車メーカーは、EVを次世代環境対応車として開発・実用化を進めてきました。

 

更に、グーグル、アップル、ソニーなどの非自動車企業が、自動運転機能付EVの事業化を検討しています。

 

何度か、本ブログ・コラムで述べていますように、既存の自動車産業は、大きな変革期に入っています。恐らく、今後の自動車産業は、今までの経験やノウハウが通用しない、一種のゲームチェンジに入りつつあります。

 

トヨタの事業分野は幅広く、大きな産業群を構成しています。このような状況から、トヨタは、社内で開発・実用化の優先順位を決めており、その中でEVを位置付けてきたのだと推測します。

 

トヨタがもっていた優先順位と、そこから発信するメッセージが、EVの急速な事業化の動きとマッチングしていなかったと理解しています。

 

トヨタが今後EV分野で、どのような自動車を市場に提供していくかが、最も明確なメッセージになります。

 

2021年12月14日に、トヨタは新たなEV戦略についての説明会を開催し、開発を進めているさまざまな車両を会場で披露しました。

 

現在のトヨタにとって必要なことは、世界最大の自動車メーカーとして、しっかりとしたEVを順次市場に提供して、EVの足場固めを行うことが、トヨタの世界市場へのメッセージとなります。

 

今後のトヨタのEVの進捗状況にも、注目していきます。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

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