日経記事;『最低賃金上げ アジア席巻 生産性の伸び上回る 自国民優遇「人気取り」外資が警戒』に関する考察 - 海外展開 - 専門家プロファイル

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日経記事;『最低賃金上げ アジア席巻 生産性の伸び上回る 自国民優遇「人気取り」外資が警戒』に関する考察

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皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

10月28日付の日経新聞に、『最低賃金上げ アジア席巻 生産性の伸び上回る 自国民優遇「人気取り」外資が警戒』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『東南アジアの各国が法令で定める最低賃金を大きく引き上げている。新興国の賃上げは消費の市場を広げるが、生産性の伸びを上回る賃上げは外資の投資を鈍らせる恐れがある。自国民の優遇を強める政権の姿勢が背景にあり、労働力が安価なカンボジアの最低賃金も数年後にはマレーシアなどに追いつく。新興国のポピュリズム的な政策を前に、日本企業もアジア進出の戦略見直しを迫られる。。。』
一般的に最低賃金とは、政府が決定するものであり、企業が従業員に払う最低限の時給や月給を意味しています。対象は、全労働者に及びます。企業が支払う賃金が最低賃金を下回ると処罰の対象となります。

かって、多くの国内製造事業者は、安い労働力確保のため、中国に工場を建設して、国内から多くの工場を移管しました。

その後、中国国内の労働賃金が上昇したこと、地方から都市部への人口移動が少なくなり労働力確保が難しくなったこと、および日本と中国の政治的関係が悪化したことなどの要因により、多くの労働集約型の工場が、中国からベトナム、インドネシア、ミャンマー、バングラデシュなどの、労働賃金が安い国に移管されました。

タイの場合、他のアセアン地域の国と違った動きをしています。国内製造事業者は、第二次世界大戦後から、徐々にタイのバンコク周辺の地域に、自動車産業や電気電子機器産業を中心に数十年かっけて工場建設などの投資を行ってきました。
タイに進出している企業数は、数千と言われています。

これは、日本とタイの関係が良好であることと、一般的にタイ人が真面目で勤勉であることから、国内製造事業者は、良質な労働力確保を相対的に安い労働者賃金で確保できたことによります。

このタイでは、15歳から64歳までの生産年齢人口が、2015年ころをピークに徐々に低下しています。また、タイの失業率は、現時点でほとんどゼロパーセントに近い状態にあること、および労働者賃金も毎年上昇していることから、新規にバンコク周辺の工場団地に工場建設する動きは、低くなっています。

タイでは、上記社会環境下で、中間所得層が多くなっており、消費意欲が大幅に向上しています。

国内企業の場合、BtoCタイプのビジネスを展開する、飲食や各種サービス、流通などの事業者が数多くバンコクに進出しています。

製造事業の場合、現時点で国内企業の工場建設の受け皿となっていますのは、ベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマーなどです。

これらの国ぐにでも、本日の記事にありますように、労働者賃金が毎年上がっていきますので、そう遠くない将来、ベトナム、インドネシア、フィリピンでの労働者賃金は、タイと同じような水準になる確率が高くなっています。

特に、繊維や靴などの労働集約型製造事業者は、高騰する賃金の影響をまともに受けることになります。

これらの事業者は、数年先を見通した上での工場経営を考える必要があります。

一方、ベトナム、インドネシア、フィリピンなどの国で、労働者賃金が上昇し続けると、巨大な中間所得層が生まれますので、国内企業にとっては、新規市場となります。

今後、中小の製造事業者は、創意工夫して労働者賃金の上昇の影響を最小化するために、製造工程を見直して、部分的にも産業ロボットなどの活用も含めて、自動化を含めた生産性向上を実現する必要があります。

現在、一つのやり方として、事業の役割分担を中小企業同士で行って、製造事業を委託して集約化する動きもあります。

現在比較的労働者賃金が安いミャンマーやバングラデシュなどのアジアの国でも、労働者賃金が上昇するとの前提で、数年先を見据えて今から準備する考え方が重要であり、必要になります。

よろしくお願いいたします。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

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