- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
シリーズでお伝えしているカナダ高校卒業に必須の最終試験情報。
今年から、日本人留学生には相当な難関となってしまいます。
「日本人留学生にとりカナダ高校卒業が更に困難に」では、カナダ、ブリティッシュコロンビア州で今年から実施される卒業州試験 Graduation Literacy Assessment の概要について書きました。
「より難易度が上がったカナダ高校卒業に必須の『読み書き能力』」では、日本の高校レベルからは想像もつかない”Leteracy”を試されるという情報を分析しました。
ここでは、更に深く細かく掘り下げ、具体的にはどのようなクリティカル・シンキングの基本が絶対必用になったのかを説明します。
クリティカル・シンキングの第一歩は、日々の観察です。
観察したことに対して”Why”を考え、その答えを論理的・客観的・科学的・具体的・批判的に追求していく過程がそこに続きます。
自分で答えに到達するまでのプロセスは “Claim Testing”と呼ばれます。
自分のClaim (Hypothesis)をどのようなプロセスで確かめるか。
BC州は、このプロセスを”Evidence-centred design”を定義しているようです。
簡単に描くとこうなりますが、矢印の部分に相当のクリティカル・シンキングが登場します。
Claim ➜ Evidence ➜Conclusion
BC州が生徒を評価する際には、次の基準を使います。
Claim : 卒業時の生徒が知識とし学び、理解しているべきことを使えているかどうか
Evidence : 生徒が今までの学習からどのように証拠となる情報を使えるか。 自分の思考を目に見えるように説明出来るか、証拠を最大活用出来ているか。
Task : 生徒が自分が学習して来た内容を、どのような形で実践し表現出来ているか。
私自身、カナダと日本を結んで開講しているCanada Clubという授業で教えているプロセスと全く同じです。
日本の中・高校生にクリティカル・シンキングを教えるのは非常に難しいです。
社会全体にも、もちろん日本の学校にも存在しない思考法ですから。
本も読まず、自由時間もなく、塾漬けになっている日本の生徒にはまず不可能な頭の切り替えだと感じています。
日常で出会わないクリティカル・シンキングをどう指導するかが、私の腕の見せどころとなります。
Big History Projectを教材とし、生徒たちが「あっ」と息を飲みはまってしまう内容でぐいぐい引っ張っている指導です。
これまでに Claim Testingを経験した生徒たちの頭は確実にクリティカル・シンキング思考法に向けて変化しているのを感じます。
例えば、中学3年生の生徒が自分の観察からこんなClaim Testingを行いました。
Claim : Why does my dog bark at all bikes? 「なんで僕の犬は自転車やバイクに吠えるのか?」
Animal behaviour(動物の行動)についてのClaimです。
Biology, Physics, Physiology, Psychology などへの興味が感じられます。
intuition: I think he was interested in faster things than himself. 「自分より速いものになんらかの興味があると思う。」
Claimを自分なりの仮説で方向付けします。
論理的・客観的・科学的・具体的でないとこの後が続きません。
Evidence: 1. Dog’s ancestor is wolf. And wolf catch prey to eat. So my dog has habit of wolf. 2. My dog is Border Collie. Border Collie is a sheep dog. So he has the habit of chasing after a moving thing.
証拠を探して来ました。
「犬は狼と祖先を共有しているので、狼と行動は共有しているところがある。 獲物を追いかける習性を表したのかも。」
「僕の犬はボーダーコリーで、羊を監視するように訓練された遺伝子がある。 動くものを追いかける習性はここからかも。」
(カナダの最終試験では、リサーチして証拠を探すのではなく、高校までで学習したことを使って理論を組み立てて行きます。)
そこからConclusionに至るわけですが、Conclusion の内容よりも、そこに至るプロセスが評価の対象として重要視されているのが、カナダの高校卒業試験です。
Claim Testing Processを自分で素早くこなせるようになるには、かなりの時間と、丁寧な指導が必要です。
ほとんど付きっきりで、励まし、おだてながら生徒の脳を変えていく根気のいる作業です。
さて、何の準備もなしでカナダに送られた日本人高校生には、Claim Testing Processの理解が出来ると思いますか。
留学前、数年間はクリティカル・シンキング思考法をあらゆる勉強の分野に応用するための訓練がないと、理解は難しいでしょう。
「カナダの勉強法は日本とは全く別次元ですので、どれだけ学習能力の高い生徒でも留学前にはかなりの準備が必要」としつこく声を上げているのはこのためです。
誤魔化し誤魔化しEnglish10, 11と何とかパスしたものの、English12で呆然としている日本人留学生のみなさん。
州の最終試験で1点でも高い点数を取りたいと思ったら、一歩でもこのClaim Testing Methodsににじり寄ることですね。
Good luck.
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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