- 平 仁
- ABC税理士法人 税理士
- 東京都
- 税理士
対象:会計・経理
正反対の判断が下されました。
なぜこのような結果になったのか、ここで検討してみたい。
地裁の判断のは、本件滞在日数に関しての判断において、
香港で約3分の2の日数を生活していること、香港での業務について、
香港各会社が存在し、その代表者としての業務をしているから、
香港の生活に実体がある、と判断したものと考えられます。
しかし、高裁は、香港で約3分の2を過ごしていることを認めながら、
その実質は、租税回避目的であって、香港各会社もペーパーカンパニーでは
ないものの、実際の業務に関与している日数が、証拠から
判明している限りでは少ないので、実体を伴わないものと判断し、
毎月の一時帰国における日本での生活は従前と変わらないことを
考えると、生活の本拠は日本にあって、香港での生活は、
実質的に単身赴任者と同じではないのか、と判断したのではないだろうか。
地裁では、課税庁が主張する、「外国における勤務等が終わった後に
日本に帰る予定である者の住所は日本にあるものとすべきであると
解しうる見解」について、「かかる見解によれば、例えば、
わが国における居宅を引き払って、数年間外国に勤務し、その間に
わが国に帰国せず、日本国内に生活拠点を保持しなかった場合であっても、
将来日本に帰る予定があれば、国内に住所を有することになる」から
この見解は認められないと一蹴しているが、課税庁は、外国へ単身赴任
している者のような日本に自宅を残して外国に赴任しているケースを
想定しているのであって、地裁の判断に疑問が残りますね。
武富士事件については、香港事業の内容を事実認定で見ていくと、
実体に乏しい印象は拭い切れません。
租税回避=否認ということは租税法律主義からすると認められませんが、
経済事象の実質的な実体を捉えて課税をすることは、
課税の公平を図る上では必要な部分でもありますね。
武富士事件については、租税回避を税制改正前にあわててやったために、
また、亡BやJ弁護士、S会計士らが作りこんだであろう租税回避スキームの
本当の意味(つまり、税務調査に入られても対抗できる要件の具備)を
原告が理解していなかったことが、否認を許した理由であろう。
そこまで踏み込んできっちりやった事件が、
次回から検討するユニマット事件である。